美咲の家
美咲の家には現在、美咲しか住んでいない。
美咲の親(俺の母親)は仕事が忙しくて、基本的に帰ってこないらしい。
だから、このマンションの部屋に、美咲は一人で住んでいるのだ。
「着替えてくるから、それまでこれでも飲んでてー」
と言って、美咲はココアを出した。
「おっ、ありがとな」
俺は、ココアを飲む。
里奈先輩も続いてココアを飲む。
「熱っ!」
里奈先輩は、ココアの入ったコップを置き、口を抑える。
「あー……里奈先輩、猫舌でしたっけ……」
里奈先輩は昔から熱いものが苦手で、熱いものは冷まさないと飲んだら食べたりできないらしい。
里奈先輩は少し考えた後、こちらを見てきた。
「風峰くーん……ふーふー……」
「嫌です」
「酷いっ!」
里奈先輩は、俺の制服の袖を掴んで、ゆらゆらと揺らす。
「どうせ美咲ちゃんにふーふーしてとか言われたらしちゃうんでしょ!私にはしてくれないくせに!」
「美咲は特別です!先輩は自分で冷ましてください!」
「なんでよ!じゃあ私が風峰くんの彼女だったら私もふーふーしてもらえるの⁉︎」
「彼女だったらいいですよ!まあ、先輩と付き合うことはないと思いますけどね!」
「なんか今日いつもより酷くない⁉︎風峰くん!」
そんな感じで里奈先輩と話していると、制服に着替えた美咲がやってきた。
「美咲ちゃーん!」
里奈先輩は美咲に抱きつく。
「風峰くんがいじめてくるー!」
「いや、いじめてないんだが……」
「もう、ダメだよ先輩いじめちゃ……」
美咲は里奈先輩の頭を撫でながら言う。
「まあ、とりあえず学校行こうぜ?」
「そーだね。先輩、そろそろ離れてください」
「えー、もう少しだけ……」
と言って、里奈先輩は美咲から離れない。
「もう……ダメですよ、離れてください」
「嫌だー」
里奈先輩は更に強く抱きつく。
俺は早く学校に行きたかったので、先輩の肩を掴んで引き離そうとする。
「先輩……!離れてください……!」
俺は少し強めに引き離す。
里奈先輩は諦めたのか、美咲から離れる。
「もう、朝から迷惑かけて……!」
俺は先輩に向けて言う。
「いや、抱きついてたら離れたくなくなっちゃって……」
「仕方ないですね……ほら、早く行きますよ」
「はーい」
先輩はカバンを持ち、玄関の方へ向かう。
俺と美咲もそれに続いた。




