男に絡まれる美咲
その後、学校での出来事や、普段何してるかなどの話をしていたら、料理が置かれた。
俺たちはいただきますをして、料理を食べ始める。
「あっ、飲み物なくなったから持ってくるね」
料理と一緒にドリンクバーも注文したので、飲み物は飲み放題だ。
美咲は席を立つ。
その時、歩いてきた男にぶつかった。
「いってぇ!」
軽くぶつかっただけなのに、男は腕を抑える。
「てめぇ……怪我したらどうするんだ!」
「えっ⁉︎今ので怪我なんてするわけ……」
「ああぁ⁉︎」
「ひっ!」
美咲は、どうすればいいかわからなくなったのか、こちらに助けを求めてきた。
「どうしよう……」
「どうしようって言われてもな……美咲がぶつかったんだし、まずは謝れよ」
美咲は男の方を向いた。
「すみません!」
美咲は頭を下げて、ちゃんと謝った。
「あ?そんなんで許すと思ってんのか?」
だが、男は許さなかった。
ということは、軽くぶつかっただけなのに怪我したと言い、慰謝料を請求してくるタイプの人間だろう。
「風峰ー、助けてー」
美咲は再びこちらを向いて、小声で助けを求める。
「そんなこと言ったって……」
「よく見たらお前可愛いな……ちょっと俺と一緒に来いよ!そうしたら許してやる!」
男はいきなりそう言い、美咲の腕を握る。
「えっ、ちょっと待って!」
しかし、男はそのまま美咲を連れて行こうとしている。
「美咲がぶつかったから美咲が悪い。だけど、美咲はちゃんと謝ったじゃないか!だから、美咲に手を出すのはやめろ!」
「黙れ!」
男は美咲の腕を掴んだまま歩き始める。
俺は男の腕を掴み、男を止めようとした。
しかし、男の力は強く、振り払われてしまった。
俺はバランスを崩し、床に倒れる。
「風峰先輩!」
秋葉が俺に寄ってくる。
春花もこちらに来て、二人で俺の体を起こしてくれた。
「いやぁ!やめて!」
俺が倒れている間に、美咲と男が離れていく。
流石にこれはマズイと思ったのか、店員が男に声をかける。
「お客様、店内で暴力は……」
「うるせぇ!」
男のその一言で、店員は黙ってしまう。
もう、俺がどうにかするしかない。
俺は再び男に近づき、腕を掴む。
「止めろ!美咲に手を出すな!」
「しつけぇんだよ!」
男は再び振り払おうとした。
だが、俺は腕をがっちり掴みバランスを取ったので、床に倒れなかった。
そして、俺は男の体を後ろに引っ張った。
すると、男は後ろに倒れそうになり、美咲の腕を離す。
「美咲!今だ、こっちに来い!」
「風峰!」
美咲は俺の後ろに避難する。
「ふざけんなよクソがぁ!」
男は完全にキレた。
だが、男は警備員に取り押さえられた。
おそらく、店員が呼んだのだろう。
「た、助かった……」
安心して、体の力が抜けた。
「風峰ー!怖かったよー!」
美咲は俺の背中に抱きつく。
「多分もう大丈夫だ。安心しろ」
俺は、美咲の頭を撫でる。
すると、抱きつく力が強くなった。
よっぽど怖かったのか、美咲の体は震えていた。
「風峰先輩、美咲先輩、怪我しなくてよかったですね!」
「風峰先輩と美咲先輩が無事でよかった……!」
「ああ、あいつがキレた時はどうなるかと思ったよ……」
俺たちは、男が連れて行かれた後、席に座った。
「お客様、冷めてしまったお料理をお取り返します」
「ああいいよ。取り替えなくて」
俺がそう言うと、店員は仕事に戻っていった。
そして、もう一度いただきますをして、食べ始めた。




