彼女と結婚させてください
始めての婚約破棄もの? です。
活動報告、感想を元に修正。句読点を再見直ししました。
文章途中で切れてるのを修正。冒頭部分を修正。
館のある広間は会場となって、シャンデリアの光りで窓の外にある闇が照らされてる部屋があった。
豪華なパーティの様な、多くの人が綺麗なドレスや紳士服を身にまとっている中……視線が1点に集中していた。
そこには、男性にべったりくっついている女性がいて……その男性が睨みつける視線の先にある、床に1人の女性が座り込んでいた。
「エロノア、お前には失望した! 僕は、マネーリアと婚約する!」
男性は、脇にいるマネーリアと呼ばれた女性を抱き寄せながら言った。
床に力なく座り込んでいるエロノア・コーネリアの頬は叩かれたのか赤くなっていて、その瞳から涙が零れていた。
何故こんな事になったんだろうとエロノアは思う。男性は、続けるようにエロノアに言う。
「マネーリアにいたずらしていた事は、分かっているんだ!」
身に覚えがない、それは確かな事だった……。男爵令嬢と言われるエロノアは、父親のオルダから無理やりといえる婚約をさせられていた。
それは覚えている……けど、彼女マネーリア・ノーリスについては、いたのかも不思議になるほど……交流が無かったからだ。
エロノアは、むしろの逆の立場であった……突き飛ばされ、未だに治っていない足と勉強の道具が無く、成績も落ち込んでいた。
「どういう……事?」
「とぼけるな! 階段から突き飛ばしたり、物を隠していたのはお前だろ!」
そんな事件が、あったなんて事は聞いたことはある。貴族間ではそういういざこざがあるのは何時もの事だったから、だけど起こった日は全て私が本を1人で読んで勉強をしていただけ。
被害者だといえるエロノアが、何故頬を叩かれただけで座り込み涙を流しているのか……。それは、ドレスの裏に見えないように隠されている、腫れていた足が原因だった。
まず、この場は第一王子のマダルト・フォーゲルとエロノア・コーネリアの婚約……祝の場だった。
正式に婚約した訳じゃないが、婚約を確定させる場所で……破棄させられるのは問題ない、男爵令嬢は一番低い地位の為、親側から断られる事もある。
エロノアは、父親の期待を裏切らない為に第一王子に尽くし、内緒で王宮に向かっては両親との交流を頑張り、入学から1年という時間をかけて、その上で納得させ……王妃の勉強をしていた。
その間にも学園では……突き飛ばされ誰かの笑い声と共に怪我を負い、知らないうちにノートを破かれ勉強もロクに出来なかった。
「私は……何も……!」
「話は終わりだ、衛兵を呼べ! そいつを追い出すんだ!」
男性……マダルトが、警備を呼ぶように叫ぶ。しかし、誰も動かない……マダルトは再び「何故来ない! こんな女など外に投げとけばいいだろ!」と叫ぶ。
この場の誰も動いていなかった……ドレスなど綺麗な服を身に包んでいる学生や、その場の秩序を護る衛兵ですら動かなかった。
その沈黙している人達の中、後ろから人混みをかき分け1人の男性が歩いてくる。
「何故、その方の言うことを信じるのですか? 兄上」
「コダルダ! どういうことだ!」
「聞いてるのはこちらです、何故その方の言うことを信じられるんですか?」
歩いてきた男性は、マダルトを兄上と呼び……彼はマダルトの弟、コダルダだ。
再度質問をしながら、エロノアの前に立ち……マダルトを睨みつけていた。コダルダは知っていた……エロノアが勉強をしている事も、足を怪我してでもこの場に立っている事も。
そして……全てのいたずらをマネーリアが指示して、生徒にやらせていた事を。
足を怪我するのも、ノートを破かれるのも、マネーリアが演じて階段から突き落とされそうになる事、物が隠された事が、コダルダは知っていた……全ては偶然といえるけど、マネーリアの行動が目立ち過ぎたのもあった。
「マネーリアは突き落とされそうになったんだぞ! 然るべき処置をしなければいけないだろ!」
「なら、ここに座り込んでいるエロノア様の足を見ても同じ事が言えますか?」
コダルダは「失礼します」と言いながら、ドレスをめくり。包帯の中でも分かる……腫れた足をマダルトに見せた。
その足を見て驚愕していた。
エロノアは、異様や気持ち悪いという言葉が出るだろうと思い。顔を手で覆ってしまう……恥ずかしいとこんな姿を見せたくなかったと。
「こんなの、作り物ですわ! 私がやったことになりませんわ!」
「作り物? 誰も貴女がやったなど、ひとことも言ってませんが?」
「あ……そ、それは言葉の綾ですわ!」
コダルダは……まぁどうでもいいことです、と呟やいた。エロノアに振り向き「私は、貴女をずっと見ていました……努力してる姿も、兄上の為に。無理して好きになろうとしてることも」と言って、エロノアの体に手を回した……。
お姫様だっこをして、奥で見守っている……マダルトとコダルダの両親に向かっていく。
「私は……期待に答えたかっただけです」
「知ってますよ、親御さんにも聞いた上で……貴女に言いたいことがあったんですよ」
すぐ着くはずの距離なのに……やけに時間がかかる感じがした。
周りは誰も喋らず……歩く2人を見守っている。エロノアは覚えていなかった。コダルダと、昔会っていた事に……。
昔……エロノアの家の前で、迷子になり泣いていた黒髪の男の子を、見かけては笑顔で手を引いていく金髪の女の子がいた。
彼女は泣いている男の子にこういった。
「私の名前はエロノア・コーネリアです。貴方の名前は?」
「コダ……コダルダ・フォーゲル」
「そう、いい名前ね! 心配してると思うから私の家でゆっくりしましょう?」
笑顔で言う彼女は、男の子から見れば……可愛い女の子だと言えた。
その時にコダルダは「……何時か、守りたい!」と言って。エロノアは「ありがとう、その時はお願いね」と返した。
全ては彼女、エロノアが無意識で起こした出来事で純粋に助けたかった、その気持ちだけで動いた結果だった。
そして、エロノアはコダルダの顔を見て……霧が晴れるように思い出した。
あの時の男の子だということを。
「もしかして、コダ?」
「そうですよ……エア」
そう言って、コダルダはエロノアに微笑んだ。
エロノアはずっと、誰かが近くにいたような気がしてはいたが……それがエロノアには誰なのか分かっていなかった。
昔、遊びあって呼んだ愛称。それは……2人の距離を縮め、そして……目を正面に向けながらも、コダルダが呟く……。
「あの時から、好きだったんだよ。エアの事が……」
「……え?」
エロノアは、手で口元をおおい。その言葉の意味を……考えてると顔がどんどん赤くなっていく。
好きという気持ちはいらない、そんな物は後から来るものだと思っていたつもりで、本では作り話であり……私じゃ絶対ありえないと思っていたからだ。
今回、衛兵が動かないのはコダルダが仕込んだことで、事前に起こるのでは無いかということで。
衛兵に伝えておいたのだ「動くな」と。
「わた、私は……」
「答えは、今じゃなくてもいいです……ですが、何時かはくださいね」
と言って、再びエロノアの顔を見て……8年前の頼りなさそうな、男の子ではない……安心させてくれるような笑顔だった。
そして、長く感じた道のりは。コダルダの両親の前で止まり……。
「彼女と結婚させてください」
そう言った。
私は彼にだっこされるまま……顔を赤くして、それを隠すくらいしかできなかった。
お読みくださってありがとうございます