第一殺「殄戮と崩壊都市」
これは、私が生きていた時代ではあり得ない世界観だ。それ故に、理解してくれる人がかなり少なかった作品だな。テーマは『狂気』だよ。
壊れていた。
目の前に広がる光景は、すべてが壊れていた。
車は横転し、街灯は倒れ、建物は錆びれ、足下には大勢の人が倒れている。
それら全てが死体だと、『彼』はすぐに理解した。
何故なら、彼は死体にとても縁がある人生を送っているからだ。
だが、死体より更におぞましいのが、人が人を襲っているのだ。
何故かは分からない。だが、目の前で複数の人が憎悪にまみれたかのような形相で、怯えて逃げる人々を追いかけ回し、捕まえ、手に持っている物で皮を剥ぎ、肉を削ぎ落とし、目をくりぬき、暴虐の限りを尽くし、その人が死んでもなお、まだ彼等の暴力は止まらない。
何故そこまでする? そんなに憎い相手なのか? 憎悪にまみれた者達は、人を殺してる時だけが、とても幸福に満ちたかのような笑みを浮かべる。理由が分からないが、また死体が増えた。
━━キシ、シシ、シ
人が人を殺し、歓喜する。殺した相手を足蹴にする。殺した相手を弄ぶ。殺した相手を貪る。殺した相手を犯す。
彼等は、殺した相手を自分達の『玩具』として遊んでいるようにも見える。
だって、その時だけが、彼等は普段の束縛から解放されたかのような幸福な笑みを浮かべているのだから。
━━━キシャ、シャシャ
無秩序。その言葉が似合う光景だ。
どうしてこんな事になった? これでは地獄だ。周囲から漂う血と死臭が鼻を突く、きっと、この醜悪な臭いからは逃れる事はできないのであろう。
━━━アァ、アアアア......!
そんな中、等々彼等は『彼』に気が付いてしまったようだ。
再び武器を取り、憎悪の形相を彼に向けながら、ゆっくり、またゆっくりと近付いてくる。
━━━サイコゥダヨォ......
そして、彼等は一斉に彼に襲い掛かった。また自分達の遊び道具が増える。そう胸に期待を膨らませながら、しかし━━。
ぐちゃ!
鈍い音が鳴り響く、彼等の内の一人が吹き飛んだのだ。
「アァ、アアアア! ずるいよぉ、お前たちだけで、何パーティー開いてんだよぉ、アァ? .......フヒ、キキキ、アァ、我慢できない、できないよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
彼の叫びに呼応するかのように、彼等の攻撃は再開し、彼は、次々と彼等を薙ぎ倒していく。
「神様ァァァァァァ! こんなクズな俺にこんなサプライズをアリガトォォォォ!! グヒャヒャヒャ、アーハハハハハハハハハ!!」
そして彼は、気が付くと自らが積み上げた死体の山に腰を下ろしていた。
そう、彼こそが、今回の物語の主人公『霧裂 丈啓』である。
彼は......日本史上最低な『殺人鬼』であった。
\Ⅰ///
「ふんふんふーん♪」
俺は『霧裂 丈啓(25)』。お友達からは『殺人ジョー』って言われてる。
「んー! んー!!」
「わかってるわかってるって、せっかちだなぁ」
俺? 今はそのお友達の家に居るの、ちょぉ可愛い子なんだ♪
今、口を塞いであげてるけど、どうやら「おねだり」してるみたいだ。
「んー! ぷはっ! むぐっ!?」
はぁい、お待たせのキス、するとあら不思議、この子ったら、妊娠しちゃったわぁ♪ お腹から包丁を妊娠するなんて......あら?
「が、は、こ、殺して、やる」
「んー?」
「わ、たし、たちを、かぞくを、ゆる、さ、な......のろって......」
......あらま、包丁産んで死んじゃったよ......プヒ、ヒヒャヒャヒャ!!
やべー、止められねぇ! なんで人殺しはこんなにも素敵なんだ!
今まで味わったどんな快楽よりも素晴らしい! 心が踊る! アーハハハハハハハハハ!!
んで、死んじゃったお友達の御自宅を、お友達の家族の『絵の具』で、綺麗にコーディネイトしてっと、はい! 出来上がり~。
これで、誰も俺が殺ったなんて分かりっこない、いやー、お友達の御自宅をコーディネイトして、お友達の初めても頂いて、マジ最高!
......でも、
「飽きてきたな。人殺しは楽しい、けど、マンネリ化してきてつまんなくなってきたな。日本での殺しも、何だかんだでムズいしな。いっそ海外に行こうかなぁ」
そんなこんなで、俺は友達と別れて、帰りにコンビニ寄って、アパートに帰ることにした。
「んあ?」
なんだ? アパートの前に誰か居やがる。暗くてよく見えないが、黒いスーツを着た長身の男?
......あ、こいつ、強いわ。なんでか知らねぇけど、こいつ俺より強いかも。
「あ、どうも、霧裂さんですか?」
「......ええ、まぁ」
「それは良かった。では」
「っ!?」
はぇっ!? こいつ、いきなり俺との間合いを詰めやがった!
オモシレェ!! 一方的なお遊びには飽き飽きしてた頃だ!!
「悪いね。君と遊んでる暇はないんだ」
「ふぐっ!?」
んな!? 俺がナイフ出す前に俺の腹を殴り、やが、た。
「げはっ!?」
し、しかもなんだ? 過去に俺は何度も殴られた経験があるが、こいつの拳は違う! 今までの奴は体の表面ばかり殴って痛くも痒くもなかったが、こいつの拳は、確実に『体の芯』を捉えてやがる......キンモチイィナァァァァァァァァ。
「喜んでるところ悪いが、君にはもう時間はないよ?」
「あぁ? ......!?」
よく耳を澄ませると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。しかも、明らかにこっちに近付いてやがる!?
「て、てめぇ! チクッたな!」
「ああそうだよ。だが、君は幸運だ」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ? 頭おかしいのか?
すると、スーツ野郎は俺に一枚の紙とペンを差し出した。
「この紙に君の名前を書け、そしたら『君の願い』が叶うぞ?」
「俺の......ね、がい......?」
「飽きてんだろ? 殺しに。だが、ここに君の名前を書くだけで、君が求めるスリリングな殺戮を楽しむ事が出来るぞ? 拒みたきゃ拒んでもいいよ? どうせこの後警察に捕まって、一生塀の中で過ごすだろうしね」
「こ、のやろぉ!」
俺の求めるスリリングな殺戮? こんな紙に書くだけで? ......どうせ、このままじゃ警察から逃げる事は出来ねぇ。
だったら━━━━━
「書いてやるよオラァァァァァァァ!!」
「はい、契約成立。ようこそ無秩序な崩壊都市『ディザスター・プリズン』へ」
Ⅱ/////
「......ん?」
何処だここ?
なんか、メッチャ寂れた建物の中、だな。さっきのスーツ野郎は何処だ?
「きゃああああああ!!」
「あん?」
んだ? なんの騒ぎだ? 俺は窓から外の様子を見ると、
「あ? んだこりゃ?」
壊れてる、全てが壊れてる、建物も、ビルも、車も、何もかもが、崩壊していた、昔読んだ世紀末漫画のような光景、いやそれよりも酷い有り様だな、おい。そして、ここは何処かの建物の五階ぐらいか? そこから下を見下ろすと、なんか人が逃げ惑う人を襲っていやがる。
「アァァアアアァァァァ!!」
「ん?」
俺が下の光景を眺めていると、背後で扉が乱暴に抉じ開けられた音が聞こえたので振り返ると、そこには、憎悪の表情を浮かべた一人の成人男性が、
「お、なんだアンタ?」
「ウガァァァァ!!」
おいおい、何いきなり俺に掴みかかってきてんだよ!
「んの!」
「ガッ!」
渾身の肘撃ち、からの膝蹴りをプレゼントしてやった。だが、止まらない! 何なんだコイツ!?
「ガァァァァウァアアア!!」
「お、おい、おま、それ以上押すな! 落ちるだろ!」
しかもこいつ、見た目ひょろそうなのに、なんて力だ! このままじゃ、俺はコイツと五階の高さから紐なしバンジーをしてしまう、悪いが俺にそんな趣味はねぇ!
「そんなにバンジーしたいなら、テメェ一人でやれや!」
俺は、その男と取っ組み合いの状態から反転して、男の背中が窓の方に向いたところで、俺はそいつを蹴り飛ばした。
「ウガァアアァァァ......」
ぐちゃっ! と、トマトが潰れたような音が聞こえる......なんなんだよ、今のはよぉ、なんで俺がこんな目に......取り合えず、外に出るか。
このままじゃ、誰かに通報されて警察の連中が来ちまう。
そして俺は、さっきの奴が入ってきた扉から部屋を出る。すると、そこには錆びきった螺旋階段が、上と下に続いており、階段の至る所に血が大量に飛び散っていやがる。
「......こ、これは、映画の撮影? けど、この臭いはいつも嗅いでる臭いだな」
この血、まだ新しいな、この量だと、この血の持ち主はとっくに死んでやがるか、だが何処にも『死体』が見当たらない。
取り合えず、俺は階段を降りる事にした。血で濡れてる階段に足をとられないように、さすがの俺も、血塗れになりながら階段ジェットコースターはしたくないしな。
「ア、アァ、ア」
「お?」
声が聞こえる。壁に『3F』て、書いてあるから、ここは三階か、の、ドアの向こうから声が聞こえる。またさっきの変なのの仲間かもしれねぇ、こんなとこでまた取っ組み合いになったら、今度こそは、俺も階段から落っこちでしまうかもしれねぇ。
俺は扉をゆっくり開けて中を覗き込むと、
「ア、アァ」
「......何やってんだ、アイツ?」
今度は、気持ち悪い笑みを浮かべてる女が、人間の生首を蹴って遊んでいる? しかも、その女の隣には、
「!?」
今、女が蹴っている生首の体か? 首があった場所から花が沢山咲いてる。近くには『フラワーショップ』と書かれた看板が見える。
ああ、そうか、この女、死体で『生花』をして、生首でサッカーをして遊んでいるんだな? キ、シシシシ、なんなんだよぉ、面白いじゃねぇかぁ。
「ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥティフォォォォォォォォォォォォ!!」
「ウガ!?」
ハッ! 俺としたことが、つい俺と同類に出会えた喜びで、勢いよく登場してしまった!
ケド、イイカァ~。
「いやぁ、素晴らしい、素晴らしいよアンタ!」
「ガァアアア!!」
「首がない死体。このままじゃ可哀想だ、寂しいと思って、彼の首に、花を植えてあげたんですね! アナタはなんて優しい人ナンダァ!!」
お、おお! うれしい、うれしいぜ! この女、なんの迷いもなく、俺の首を締め上げていく、キ、シシシシ、こんな所で同類に出会えるなんて、なんて奇跡なんだ!
「じゃ、俺も死体で生花してみるね♪ オマエガ、剣山ナ」
ザシュッ! ザシュッ! バタッ、ギーコギーコ、ヌチャ、グチャ、ゴトッ、ゴロゴロ。
Ⅲ////
「ふぅ、いい仕事をした。初めての生花だけどさぁ、どぉ? アンタ程ジャナイガ、ナカナカニイイデキダロ?」
綺麗だ、美しい! こんな殺しもあったんだ! 俺は、こんな美しい殺し方を教えてくれた彼女の『体』を使って、生花をしてみた。
はぁ、綺麗だ。俺、普段から花を愛でたりしないけど、死体から生える花が、こんなにも美しいとは思わなかった......ケシャ、シャシャ、ヒヒ!
「しかもアンタ、意外といい体してんな! 顔もこんなに綺麗だし~ムチュゥゥゥ!」
もう彼女と俺は『友達』だ! 友達の証しに熱いチューをしなくちゃ、それに、頭だけになてくれたから、持ち運びに苦労しなくて済みそうだなぁ、ゲヒャヒャ!!
て、事で、十分楽しんだし、彼女の体をフラワーショップに飾ってあげて、彼女の頭を抱えて、一度外に出るかぁ。
「おお、ほほ! すっげぇ!」
近くで見るとすげぇ! 見事に建物が壊れてる! しかもほぼ全て! ここは、外国の何処かの街か? それにしても絶景......げふん、げふん、酷い有り様だなぁ、誰か居ないかなぁ?
「お? ねぇねぇ君、見てよこれ! バット! 金属バットが転がってる! よぉし! 今から野球するぞ! 君が玉な!」
カッキィィィィン! ん~いい音♪ 彼女を野球の玉にして、俺はバッティングをした。いや~、意外と人の頭って、飛距離あるな~。ん?
「ウガァ!?」
あ、人に当たった。
「あ~すみませ~ん。僕の彼女がご迷惑を」
「ガァァァァ!!」
おやぉ、オトモダチだったかぁ、キシャシャシャ!!
////Ⅳ
で、気が付いたら、俺は死体の山に腰掛けていた。
中々にいい眺めだな。この壊れた都市、地べたに転がる死体の絨毯、からの死体で出来た玉座に腰下ろす俺。
ん~♪ まるで死者の王様になった気分だな~。どうやらここには、あのうざったい警察も居ない、いちいち証拠隠蔽もしなくていい、こんだけ殺しても、誰にも何にも言われない......ここはオアシスか!?
俺はパラダイスに来ちまったんだ! 何の気兼ねもなく人をゲームみたいに沢山殺せる楽園。
ヒ、ヒヒヒヒヒ、ここが何なのか知らないが、俺をこんな所に送ってくれたスーツ野郎には感謝しなくちゃなぁ!
「す、すごい」
「アァン?」
んだ? 近くの建物から人が出てきた。こいつは普通のようだな。
「あれだけの『マッド』を一人で倒せるなんて......」
マッド? て、なんか次々と人間が増えるぞ。しかも全員『普通』の奴等だ。
「こ、こんな凄い人が居たなんて.....」
「救世主だ」
「はぁ?」
何言ってんだ? て、おいおい! 何お前ら全員頭さげてんだ!?
「お願いします! 貴方様のお力をお貸しください!」
「どうか!」
......よし、こいつら殺そ。俺が王様気分になっているときに、何なんだ、人を救世主だのなんだのと、俺はヒーローが大っっっっっっ嫌いなのによぉ。
白けさせやがって......待てよ。
「その前にお前ら、ここが何処なのか教えやがれ」
//////Ⅴ
普通の奴等に案内されて、俺は近くの建物の一室にまで来た。広さは、六畳ぐらいか? 天井の高さは二メートルぐらいか? まあまあだな。
「んで? ここはなんだ? 外の連中はなんだ?」
「え? 知らないのですか? ここは『ホープシティ』だった場所なんですが......」
はぁ、ここは夢と希望が溢れる大都市『ホープシティ』だったが、三日前に街の人々が突然豹変して人が人を襲う事件が発生。それが急速に広まって、この街から希望が消え失せたらしい。
人々が暴走した原因は不明、完全に法が通じない無秩序な都市。政府は、これ以上の被害を抑える為に、ホープシティの周囲に『壁』を設置。完全に隔離されてしまったわけだ。
何ともまぁ、ゾンビものでは在り来たりな設定だな。でも、外の連中はゾンビと違ったな、人喰ってる奴は居たが、殆ど極少数だったし。
「ま、だいたい分かったよ。それで? お前たちは、さっきの奴を『マッド』と呼んでいたな?」
「は、はい、マッドは仮称です。彼等がなんであのようになったかは不明です。最初は細菌やウィルスが原因と思われたのですが......」
「違ったってか?」
「はい、この街には、天才的名医『Dr.エラー』と言うお方がおりまして、政府の容認でこの街に残ってマッドの研究をしていて、我々のような正常者に衣食住を与えてくれていると言う人だそうです」
Dr.エラー? 胡散臭そうな名前だな。本当は、外の連中の体弄るのが好きな変態ってオチじゃねぇだろうなぁ。
どうせ、こいつらみたいな能天気野郎にエサをちらつかせて、こいつらもオモチャにされるんじゃねぇの?
こいつらは、この街から出たくても出られない、だからこそ、その『Dr.エラ呼吸(笑)』の元に向かって、身の安全を確保したいそうだが、外があんなんだから出られない......そんな時に運良く、俺と言うボディーガードを見付けたと......けっ、気に入らね。だが、こいつらは俺を頼ってる感じだな、それほどなまでに精神が摩耗してんだろ。
キシャヒャヒャヒャ!!
「いいぜ、そのドクターの元に向かおうぜ? 俺も興味あるしな」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」
「でぇ? ドクターの居場所は知ってるのか?」
「は、はい、そこまでは私が案内します。皆も付いてきてくれるか?」
この場に居る全員同意してるな。いいぞいいぞぉ、キシシ! 途中でゼンインコロシテヤルカラヨォ♪
楽しみだなぁ、殺すならドクターに出会う一歩手前でこいつら全員殺そ、希望を手にする瞬間、その瞬間に絶望に叩き落とされた人間の表情はたまらないからなぁ、じゅるり。
しかもこんな極限状態だぁ。きっと、さぞや素晴らしい顔芸を見せてくれるのを期待してるぜぇ、オモチャ共ォ、ヒャーヒャヒャヒャ!!
Ⅵ///////
今のメンバーは、男四人、女二人、ガキ一人、計七人って所か、このメンバーで、俺達は外ではなく、屋内を経由しながらドクターの元に向かってる。
ドクターは、街の東の地下施設に居るらしい。俺達は今南東に居る。そこから下水道に移動してドクターの施設に向かう予定だ。
に、してもだ。下水道にも居るもんだな。こいつらはよぉ!!
「おらぁ!!」
「ぷぎゃぁ!?」
マッド、もう少しマトモな呼び名はなかったのかねぇ?
ま、呼び名なんてどうでもいいや。コロセレバソレデイイ。
「う、う、うぇぇぇぇん!!」
「あぁ?」
一緒に居るガキが泣きわめきやがった。
「お、おい! その子供を黙らせろ!」
「待ちなさい! この子まだこんなに小さいのよ!」
「でも、このままじゃマッドが集まっちまう!」
「そうだそうだ(良いぞぉ! もっと叫んでキチガイ共を集めろォォォォ♪)」
ガキがいい感じに叫んでキチガイを呼んでくれてる♪
ありがとう、お陰でモットコロセル♪
「「ァアアァァァァ!!」」
そぉら集まってきたぁ!!
Ⅶ/////
「も、もうすぐだ」
「や、やっぱり強いなアンタ、そんなバット一本で頑張れるなんて......」
フシュヒャ! なんか、たっぷり殺したな。時間的には出発してから2時間ぐらいか。
下水道、普通の人間からすると、メッチャクチャ嫌な臭いがするんだろうなぁ。
ま、俺『鼻が悪いから』全然に気にならないが......ようやく見えてきたな。
下水道を抜けると、そこには貨物用のエレベーター。この下に居るのか、変態ドクターが。
「よ、よし、貨物用だからな、人数は限られているだろう。まずは、女子供を優先する、それでいいか? 霧裂さん」
「......え? あぁいいんじゃね?」
そうだな、女子供を先に行かせてから、男共を殺して、後で女子供とドクターを殺すとすっかな♪
「......おっそ、このエレベーター遅すぎじゃね? なぁ......あ?」
俺が振り返ると、さっきまで一緒に居た連中の喉から血の噴水が上がってる......なんだこれ? 急展開過ぎたろ......れ?
「あ、がぼ!?」
あれ? れれ? お、俺も? なんで、こん、なに、喉から血が、
「キヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
こいつは、一緒に、こうど、う、して、た、ガキ、なんで、オマ、エ、が、手に鉈持って......ナーンチャッテ♪
「キヒャ!?」
「がぼ、ぼべ、おご」
お前がこいつら殺したのか! なぁぁぁぁんて、ことしてくれとるんじゃあ!! 俺の楽しみを奪いやがってぇぇぇぇぇ!!
「がべぼ!!」
「キピャ!?」
ぶ、は、はは、ザマァミロ、口の中が血でいっぱいだが、それでももう一度言う、ザマァミロクソガキ♪
俺は勢い良くガキを掴んで、地面に叩き付けて、頭を踏み潰してやった。
あー、ガキだから、全然良い音が鳴らねぇなぁ。 代わりにガキの血がたっぷりと顔に付きやがった。
このガキもマッドだったのかぁ。それとも、今なったのか、今はもうどうでもいいや。
「が、は、ははは」
死んだ、ガキもこいつらも、『俺も』、みんな死んだ。
は、はは、やったぁ! こんなにも『お友達』に囲まれて逝けるなんて、お、俺は、幸福者だなぁ。
俺、寂しくな━━
「あーあ、誰かに呼ばれて来てみれば、なんだこのありさま、この男、死にかけてるが、まだ息があるな」
だ、れだ? は、白衣の......モジャモジャ......。
Ⅷ///////
何処だここ? 真っ暗だ。何も見えねぇ、俺は死んだのか?
「死んでないからさっさと起きろ」
「ぐぇ!?」
あ? 何処だここ? あの後どうなったんだ?
「気が付いたかね。お前さん、中々に頑丈な体をしとるな」
「はぁ、で、アンタは?」
「僕かね? 僕こそが周りに天才とちやほやされてるイカレ学者、人は皆『Dr.エラー』と、勝手に呼んでくれちゃってる」
こいつが? 予想通りのマッドサイエンティストな風貌してるな。ここは、まるで手術室だな。何だぁ? もしかして、このドクターが俺を助けたのか?
「助けてないよ」
「.....俺の心を読むな」
「そんなことできないよ。でも、大体考えてることは分かる。ここに運ばれる前の君は、喉から大量の血を流していたんだが、僕は目を疑ったよ。あ、煙草吸う?」
「俺煙草嫌いだから、いらねぇ」
「そうか、おいしいのに、ふぅ~」
おい、ここで吸うな、嫌いつったのによぉ。
「君ってさ、本当に『人間』なの?」
「あ?」
「いやほら、喉、ちょっと手鏡で見てみてよ」
俺の喉? ....... なんだ? 傷跡が一つも無いな。あのガキに喉を切られたのが夢じゃないなら、やっぱり傷跡がないのはおかしくないのか?
「アンタが治してくれたんじゃないのか?」
「さすがに短時間でそこまで治せる程の腕前はないよ。君の喉が勝手に傷口を塞いだんだ」
「......はぁ? げっ!?」
なっ!? こ、こいつ、いきなり俺の手首をメスで切りやがった!?
「てめ、このやろ! 何しやが......る?」
「ほら、やっぱり、傷が勝手に塞がる」
いや、いやいやいや、なんだこりゃ!? これ、この変態ドクターが俺が眠ってる間になんかしたんじゃないのか?
「何もしてないよ」
「だから心読むな」
それにしても、傷口が勝手に塞がるか、なんでこんな事になってんだ? ......えい♪
「っ!? 何してんの君?」
「あぁん? 俺の傷がどこまで治るのか確認してんだよぉ!!」
ひゃぁぁぁぁぁぁ!! ドクターからメスを奪って、自分の腕をズタズタにしてみた!
すっげぇ!! なんですぐに傷口がふさがるんだ!?
刻むだけでなく、指も喰ってみよ♪
「......さっきウィンナー食べたばかりの僕になんてもの見せてんだよ」
ウヒャヒャヒャ!
「おい、見ろよドクター! 俺の指が、俺の指が生えてきたぜぇ! 面白すぎだろ!! なんだこれ! なんだこの体! 神様からの恩恵ありすぎだろぉ!」
「......うーん、僕はとんでもない化け物を拾ってしまったのかな?」
Ⅸ///////
結局、俺のこの体の事が全然分からないまま、俺はドクターからマッドの研究成果を聞いてみた。
「結論から言うと、細菌でも感染症でないのは確かだね。では、何故人々は狂ったのか、僕は『電波』が関係してると思う」
「電波?」
「そ、聞いたことない? 人って電波で洗脳できる話。アメリカの研究チームが発表した話だけど、細胞サイズのLEDをマウスの脳に埋め込み、遠隔操作コントローラーからの電波をマウスのニューロンに送ると、脳内にドーパミンが発生して、細胞サイズのLEDが点滅したって話」
「......知らねえし興味ねぇ話だ」
「だろうね。で、この後、マウスは実際に餌を貰った時と同じような行動を示したそうだ。つまり『喜び』だ」
「あー、つまり、餌を貰ってないが、餌を貰った時と同じ喜び方をしたって事か?」
「そういうこと、正直、これはまだマウスの実験段階で、人にはまだ使っていないそうだが、つまり、これは僕の仮定だが、遠距離から人々を発狂させる電波を誰かが送って、それで人々を狂わせてるんじゃないかな?」
「......なんか、SFっぽい設定だな」
「そうSF。確かに、遠距離から電波で人を操るなんて、そんな話、現代で実現できるとは思えない。だが、マッドを数体確保して、脳内を調べると『チップ』が出てきたんだ」
「チップ?」
「あり得ない話だが、やっぱり遠距離から誰かが操ってるとしか思えん。で、僕が目を付けたのが、この街の中央にある電波塔。そこに今回の黒幕さんが居ると思うんだが、君、行ってきてくれない?」
「はぁ? なんで俺が?」
「だって君、何故か不死身だし、その体なら、千人、や一万のマッド相手でも余裕だったりしない?」
「......やーだ。興味もねぇよ。それよりもドクター」
と、俺はバットをドクターの脳天に向けて振り下ろし、当たる直前でバットを止めた。
「何の真似かね?」
「キ、シシシ、どうしても頼みたいならドクター。俺の『友達』になってくれよぉ」
「......いいよ」
「マジ!?」
「君はあれかね? 友人の言うことなら聞けるタイプだったりするのかい? だとしたら、電波塔を調べて来てくれ、頼むよ」
......なんか、こうもあっさりだと、逆に疑っちまうが、だがこれで、ドクターを殺す理由ができた♪
やっぱ殺すなら友達の方がいいよなぁ。友達なら、殺しても文句言われないよなぁ、ギャハハハハハハハハ!!
Ⅹ/////
『あー、テステス、聞こえるかね霧裂くん』
「おう、聞こえるぜぇ」
俺は地下施設を出て、地上に出ていた。相変わらずマッドの連中がばっこしてやがる。
「この無線、中々に感度がいいな」
『元々軍用の無線機だからね。ところで、今何をしてる?』
「今? 目の前に偶然居た『お友達』に血のジュースを飲ませてる最中だ♪」
「ムガァァァァァァ!!」
いやぁ、不死身だからこそできる遊び方。俺は自分の手首を切り落として、そこからあふれでる血をお友達の口に突っ込んで、無理矢理俺の血を飲ませてる。
「き、しし、どうだ俺の血は! 舌が蕩けるぐらいに美味いだろぉ、ヒャーヒャヒャ!!」
「ゴ、バ、プペ!?」
お友達の口の中で手首が再生しちゃったので、俺はそのままお友達の舌を引っこ抜いた後に、頭をバットで殴り飛ばしてやった♪
『......お楽しみのところ悪いが、そろそろ移動したまえ』
「分かってるっての、それよりドクター」
『ん? なんだね?』
「......なんか、ストーキングされてるんだが」
『ほう? どんな奴かね?』
「アンタと出会う前に殺したはずの『ガキ』。俺の喉を切った張本人で、頭を潰した筈のガキが、何故か生き返って、俺をつけてやがる」
「......じーっ」
なんだあのガキ? 俺と同じ不死身なのか? ジロジロ見やがって......
『殺した筈の相手が生き返ったか、たぶん、その子はかなり重要な存在かもしれん。一度接触してみてはどうかね?』
「正気か? 俺を殺しやがったクソガキだぜ?」
『もし、何かあっても、今の君なら怖くないだろ? それとも、子供と戦うのが苦手か?』
「ケヒャ、んなわけだろぉ、むしろ大好きだよぉ!」
俺がガキに近付くと、ガキは物影から出てきた。
「おいガキ、お前名前は?」
「......?」
言葉が通じてないのか?
「......おともだち」
「あ?」
「おともだちに、なって」
第一声がそれかよ。なんだこいつ? しかも、よく見ると、首筋に『A-108』って書いてあるな......。
「お友達? いいぜぇ」
「......!」
なんか喜んでる。しかも、俺の足にしがみついてきた。読めねぇガキだなぁ。
「ドクター、ガキになつかれた。どうしたらいい?」
『その子供も不死身なら、別に問題ないんじゃない? そのままその子を連れて電波塔に向かってくれ』
「......あーい、よっと」
足にしがみつかれると邪魔だ。だから肩に乗せた。
「うーし、んじゃ、行くかぁ」
ここはいい場所だ。人々が狂い、己の内なる欲望を満たそうとしてる狂気の世界。
しかも、ドクターにガキと言った『お友達』もできた。楽しみだなぁ、こいつらと一緒に逝ける時を楽しみにしてるぜぇ......ん?
「あ? お前女の子だったのか?」
「......キシシ!」
『霧裂くん、幼女に手を出すのはNGだよ』
「おーいおい、俺にんな性癖ないわーい」
......別の性癖はあるがな~♪
ⅩⅠ/////
プルルル、プルルル、ガチャッ
もしもし? ああ、『霧裂 丈啓』ですか? 無事に『ディザスター//プリズン』の世界に送りましたよっと。
今彼の行動を監視してますが、ハッキリ言って読めないですね。こんなジョーカーキャラを物語の主人公にして良かったのか疑問だが、まぁいい。
ああ、ああ、ではまた連絡する。
ガチャッ、ツー、ツー
「......いや、マジでよく分からない奴だな霧裂。お前もそうだが、このディザスター//プリズンの世界観もよくわからん。アン=ボミスって奴は数十年前の作家だろ? この世界観、どう見ても現代が舞台じゃないか......謎過ぎる。まだまだ調査が必要のようだな」
第二殺に続く。
【ディザスター//プリズン】
人々の夢と希望に溢れた発展都市『ホープシティ』で、突如人々が凶暴化するという未曾有の事態が発生した。
政府は、これ以上の被害を抑える為に都市周辺に『壁』を設置。
その中で、天才的な名医『Dr.エラー』が立ち上がり、原因究明に乗り出す。
と言った話だね。これは私から見たらかなり近未来な世界観だが、何故私がこの世界観を閃いたのかは内緒だ♪




