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開幕の時だ。
昔々、あるところに稀代の小説家『アン=ボミス』と言う謎の小説家がおりました。
彼は元々小説家ではありません。
彼が小説家になったのは、彼が死ぬ直前であったらしい。
以前までの彼が何をしていたのかは分からない、何故急に小説を書き始めたのか、それを知る者もいない。
彼は最後の力を振り絞って、生涯最後にまったくジャンルが異なる『六冊』の作品を書き上げた。
彼の死後、彼の知人が彼の自宅からその六冊の作品を発見し、彼の作品に感銘を受け、その六冊の小説をある出版社に発行依頼し、売り出したところ瞬く間にベストセラーとなり反響を呼んだ。
これで、『アン=ボミス』の友人は、天国に居る彼もきっと喜んでいることだろうと思い、この六冊の作品を売り出した友人自身も、大いに歓喜した。
ただ、一つ気掛かりがあるとするなら、何故、六作品全ての結末が『BAD END』なのだろうか?
そんな友人の疑問は解決することなく、時が流れ━━━━。
プルルルルルル、プルルルルルル、ガチャッ
「聞こえるか?」
「聞こえてるよ。それに、この会話が傍受されることはないから安心しな」
「よし。では、もう一度お前の任務を確認する。まず数十年前の小説家『アン=ボミス』が死ぬ間際に残した六冊の小説の結末を変えること」
「ああ、ブリーフィングの際に六冊全て読んだが、勿体無いなぁ、あんなに面白いのに、なんで全部BADな終わり方すんだよぉ、あれもありちゃあ有りだが、なんか納得いかねー。その『アン=ボミス』って奴、そうとう捻くれてたんだろうな」
「......ただの捻くれ作家で良かったのにな。まさかこの六冊全てが、我々が居る現実世界そのものを破滅させる『呪いの書』だったとは」
「はは、めっちゃ捻くれてるな」
「笑い事か! たく、さっさと『物語の主人公』を六人見付けてこい! いいな!」
「......でもさ、うちのエリート数名がこの六冊が生み出した『架空の世界』に送り込んで、未だに誰一人帰って来ないんだろ? そんなのに一般人を巻き込んでいいのかい?」
「......私の推測では、我々が送り込んだエージェントは、皆『物語の主人公』になりえなかっただけだと思われる。だからだ、お前が一般人の中から六冊それぞれの主人公に向いているとされる『六人』を見付け、呪われた六つの世界に送り込んでBAD ENDを回避させる。それがお前に課せられた任務だ。失敗は許されん!」
「了解。じゃ、切るぞ」
ブッ! ツーツーツー。
六つの異なる世界、それら全てが絶望に満ちた結末に終わっている。
それは、六つの物語の主人公達が『主人公としての素質』が足りなかった事に起因している。
ならば、この絶望の未来を変えるには、その六つの物語に適した主人公を別の世界から送り込む必要がある。
何故、『アン=ボミス』はこの呪いの物語を作ったのか、何故、現実世界をもBAD ENDにしようとするのか。
そんな謎に満ちた物語の引き立て役を命じられたのがエージェント『S』。彼は、現実世界のBAD ENDを回避する為に『六人の主人公』を探す。
一週間後。
「ふぅん、中々に目ぼしい連中が揃ったな。......こちら『S』。これより六人全員に接触し、彼等をそれぞれ六つの世界に送り込む。ああ分かってる。俺の正体をバラすな、だろ? しっかし、これじゃ完全に拉致だな......あぁ、あぁ、判ってる、じゃ、切るぞ......恨むなら、こんなクソッタレな物語を考えた『アン=ボミス』を呪え、世界の命運は文字通り君達に託された!」
これから繰り広げられる六つの物語に続く。
六つの世界、六つの物語。
彼等ならきっと、この結末を変えてくれることを信じてるよ。