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確心

作者: 宿屋の店主

彼は溜め息をついた、また妻は見知らぬひとのもとへ出向きに行ったのだろうか。息子は楽しくなさそうに寺子屋でもらった本を眺めている。


「何故、お湯はぶくぶくなるの?」息子は質問してくるのだが、彼は町の鍛冶屋なもんで幼い頃からろくに勉学に励んだことがないので、当然、教えることができない。「わからないの?」息子はバカにしたようにそしてつまらなそうに呟く。これまで何事にもろくにうちこんだことのない彼は息子に尊敬されるようなことは一度もない、まして、妻をよろこばせることもない。何故、こうなってしまったのだろうと思いつつ、気をまぎらわすために外に出た。


霧がひどく濃い昼下がりだった。彼が川沿いをぷらぷらと歩いてうると、駕籠を運ぶ男二人と鍬を持った男が前を通り過ぎて行った。そのなかに女が一人乗せてあるのを、彼は見逃さなかった。ひとさらいだと感づいた彼は気付かれぬように、あとを追っていった。そのうち、町はずれの小高い丘の神社に着いたので、その男達は駕籠をあけた。彼はそれを物陰から見ていた。



彼は声を出さずにはいられなかった。


拐われていた女はもう既に死んでいるようだった。そして、なんとその女は妻だった。彼は男等にばっと飛びかかった。その瞬間、激しい痛みとともに目の前が暗くなっていった。




ぱしんと叩かれるおとがして。鈍い痛みで彼は起きた。


見上げると、異国風の服を着た男が目の前に立っていた。さらに、自分の周りには黒い軍人服に似た服を着た青年や和服を着た若い娘たちが椅子に座っていた。


そして、なぜかその異国風の男は「お前寝てただろう、それならこれも楽勝だな。何故、湯は沸騰するんだ」と男は質問してきた。彼はどこかで同じようなことを聞かれたなと思ったが、思い出せなかった。


その時、座席に一片の紙が飛んできた。その紙には答えが書いてあった。


飛んできた方向を見ると彼はなにか見覚えのある懐かしい面立ちをした娘を見つけた、彼女は微笑んでいる。そして、何故か目の前がにじんだ。そして、また暗くなっていく。


彼は斬られたはずが生きていた。そして傍らには、妻がたおれていた。彼にはわかった、妻は自分が斬られるのを最後の力を振り絞りかばったのだと。妻の懐にはひとつの児童向けの本と塗り薬がはいっていた。塗り薬はおそらく彼のためであろう。


彼女はわかっていた。彼は格好の良いところはみせられなくても、手に血が滲むまで鉄を打ち込んでいることを。 彼はただ彼女の手をにぎり、祈るようになにか呟くと彼女を抱き抱え、山を降りてく。


その足取りは一見重いようでもあるが、たしかな足取りであった。彼は確信している、また逢えると。

これが第一作目なんでまだまだ改善点が多いんですが、少しずつ頑張っていこうと思います。

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