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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
専門学校、職場体験編
99/120

晩秋のかまくら

 駅務研修から5ヶ月が経過し、11月に入った。思えば近ごろ駅務研修や勉強で咲月さんとお出かけ、というか、デ、デート、をしていなかった……。


 とりあえずということで僕らは近所の街、鎌倉を散策中。江ノ電の青いメルヘンな車両からは片側一車線の狭い国道を挟んですぐに相模湾がきらめいている。同じ地区なのに、自分たちの住む街とはどこか違って、やや派手な印象だ。


 鎌倉のきらめく海沿いをのんびり揺れる江ノ電……。といえば穏やかで聞こえは良いけれど、実際は通勤ラッシュに匹敵する超混雑。江ノ島えのしま駅を出てからは乗客とドアのガラスに圧迫され、景色を強制的に見せられている具合だ。窮屈すぎてもはや会話さえ躊躇われる。


 しかし通勤ではなく観光目的でこれほどまでの人気を博す鉄道路線は滅多になく、それが地元にあるという事実がなぜだか誇らしい。


 十数分後、長谷駅に到着して電車を降り、混雑から解放された咲月さんは不安定な歩調で対面式ホームの壁際まで流され、激突寸前で自らの足にブレーキをかけた。


「着いた~あ!」


「いつものことだけど、すごい混雑だった」


 長谷駅は海岸から山間部へ続く通りと交差する対面式ホームの小さな駅で、長谷寺はせでらや、かの有名な大仏さまの最寄駅。観光客が殺到しない日は平日を含めほとんどないのに歩道は二人が収まるくらいの幅で、故に車道まで人が溢れている。また、交通量も多く、人、乗り物がごった返し渋滞が発生している。この道を通る路線バスが時間通りに来るのは早朝と夜間くらいだ。


 道沿いには洋風で小洒落たカフェやクレープ屋、ちょっとファンキーというか、おちゃらけた雰囲気の土産物店などが軒を連ね、各店とも客で賑わっている。その中でただ一つ、駅前の雑居ビル2階に入居している100円ショップがこの界隈かいわいの生活感を漂わせている。


 僕らはまず道を奥まで進み、大仏さまにお参りし、外の光が少しばかり差し込む胎内たいないを拝観。何らかのご利益りやくを授かり、駅の近くまで戻った。


「ちょっとクレープでも食べながら休もうか」


 進行方向左手のクレープ屋前を通りかかったとき、歩道の内側を歩く咲月さんは僕のほうを向き言った。


 僕が同意すると、彼女は軒先カウンターに立つ若い男性店員に「すいませーん! イチゴバナナおねがいしまーす!」と元気よく注文。続いて僕は「えと、ツナサラダをお願いします」とややどもり気味に声を発した。


 このままではいけない。鉄道会社に就職できない。早く直さなきゃ。


 お読みいただき誠にありがとうございます!


 更新が遅くなりまして申し訳ございません。ここから数回、鉄道ネタを交えたお出かけの章になります。

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