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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
専門学校、職場体験編
97/120

一番大切なのは命

 4分もの遅延が発生しているのに、機敏ではあるものの、うろな地下鉄と比較してあまり慌てた様子はなく列車を発車させた久里浜さんや運転士、車掌。


 日本の鉄道の売りの一つに『定時性』がある。うろな地下鉄はそれを頑なに守ろうとしていたが、日本どころか世界最大手の日本総合鉄道が彼らのレベルを下回るとはどういうことだろうか。


 旧国鉄、つまり以前は公企業だったので、その体質を引きずりグダグダしているのだろうか。実際、休憩室の雰囲気は会社というより井戸端会議でかしこまった感じはしなかった。


 ホーム上に落ちたゴミを拾ってはゴミ箱に入れ、その間に到着する列車は徐々に定時運行に回復してゆく。


 遅延してもあまり焦らない理由を問う僕に、久里浜さんはこう答えた。


「それは会社の考え方だね。うちの場合は無理に回復運転をすると事故に繋がって、脱線とか命に関わるトラブルに発展したり、ブレーキ操作をミスして停止位置をオーバーするともっと遅延が拡大するし、私たち現場の社員が焦って冷静な判断を欠いたら、それを見ているお客さまを不安にさせちゃう。だから、自分たちのできる範囲で普段より走行速度を上げたり停車時間を短縮したりはするけど、無理な回復運転はしない。


 タイムイズマネー。でも一番大切なのは命。それを常に頭に入れておくようにっていうのがうちの社訓。


 けど遅延が多いのは決して看過していいことではないから、今後は一列車あたりの運転区間を短縮してトラブルのリスクを分散させるつもりみたい」


 そうか、この全社的かどうかはわからないけど、この駅の社員たちが和気あいあいとしているのは、常に心に余裕を持っているからなのかもしれない。


 やっぱり僕が目指すのはこの、日本総合鉄道だ。けど僕は一度、不採用となり、採用となった久里浜さんがいま、隣にいる。


 僕には何が足りない? 単純に学科試験で足切りされただけだろうか? 彼女や他の社員の方と、何が違う? いま一度、真剣に自分と向き合ってみよう。

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