列車遅延
蘇るうろな地下鉄での記憶。1分でも遅れを出したら誰かに怒鳴られる。それがお客さまか、乗務員か、指令員か、駅の誰かか、そのすべてか。
そわそわしながらも久里浜さんの金魚のフンになり、うろな線5番、主本線側に立つ。
「こんどの3624M列車が新うろなで駆け込み乗車をしようとした人のカバンがドアに挟まって動けなくなって、たったいま動き出したんだけど、その影響ですぐ後ろにいる848M列車も駅間停車して遅れてるから、それの案内放送するね」
言って、久里浜さんは監視台に上がりホームや線路の状況を確認しながら、僕はその横で彼女を見上げる。久里浜さんの言った数字とアルファベットは個々の列車に付けられた番号だ。
『お客さまにお知らせいたします。こんど5番線にまいります大宮、宇都宮、福島方面、快速電車の仙台行きは、新うろな駅でのドア点検の影響で、ただいま4分ほど遅れて運行しております。この影響で、後続の千葉方面、成田経由の普通電車我孫子行きにも遅れが生じております。電車遅れまして申し訳ございません。到着までいましばらくお待ちください。なお快速仙台行きは2つドア6両編成、小山から福島間は各駅に停車いたします。普通我孫子行きは3つドア10両編成、後ろ6両は途中の成田止まりとなっております』
と、業務用語なら一言で済むものが、お客さま案内になると長文になる。ちなみに2つドアの仙台行きは、特急型車両を使用したレアな快速電車だ。
通勤時間のピークが過ぎ、ホームに人はまばらだが、それでも昼間よりはずっと多く、すべての乗車口の前にお客さまが立っている。
『お待たせいたしました。うろなに到着です。到着遅れまして申し訳ございません。快速仙台行き、発車いたします。マエアトオーライ』
まもなく遅れている快速仙台行きが入線してきて、短めに発車メロディーを鳴らすとすぐにドアが閉まり、発車した。数分後、隣の西うろな駅を通過した快速電車に引き離された普通我孫子行きが入線。これも遅れているので停車時間を短めに発車させた。
あのおバカキャラの久里浜さんが凛とした動作で指差確認をする姿はなんというか、ギャップ萌えした。
この間、特にクレームやお客さまトラブルはなく、次の電車が定刻通り到着するまで平穏に過ごした。
しかし僕には気になることがあるので、久里浜さんが監視台から降りてきたところで訊ねてみた。
「あの、電車が遅れてるのに、なんであまり焦ってないの?」
お読みいただき誠にありがとうございます!
更新遅くなりまして申し訳ございません。本日は雨天の地域が多いようですが、お出かけの際はお気をつけください。