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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
専門学校、職場体験編
93/120

うろな地下鉄の実態

「ああああああ!!」


 二日連続のぶっ通し徹夜勤務、安い給料、その上ちょっとでもダイヤが乱れたら指令からも客からも区長からもプレッシャーかけられ……。毎日二時間しか寝られないし、もう限界。このままじゃ事故を起こすのも時間の問題だ。


 うろな地下鉄の運転台。駅間で列車を急停車させた一人の運転士は、悲鳴を上げて運転台から飛び降り、そのまま付近の運転区のある駅まで全力疾走。ロッカーに入れた私物を持って無言のまま職場を飛び出した。


 運転士に限らず、多くの同社社員は日々このような思いで業務に従事している。収入は低水準で安定しており、少子化が加速する中、今後の発展は絶望的だ。


 ◇◇◇


「いまね、運ちゃんが悲鳴上げたでしょ? あれね、色々積み重なって、運転中に電車を止めて職務放棄したんだよ。こういうの、うちの会社ではよくあるの。これまで五人はこんな感じでそのまま辞めたかな~。人手不足だから何本かは運休せざるを得ないね」


 代務の運転士が到着するまで約2時間、同路線は全線で運転を見合わせ。総合鉄道会社やバス会社に振替輸送を依頼した。


「おい! ここ最近で乗務員トラブル何回目だよ!! てめぇの会社どうなってんだコラァ!!」


「そうよ!! これじゃコンサート間に合わないじゃない!! チケット代弁償しなさいよ!!」


 大橋助役、高橋さん、僕の三人は、しばらくの間、振替乗車票を取りに次々と押し寄せる客に罵声を浴びせられ、職場体験はわけのわからないまま終了した。


 鉄道の仕事に関心を抱いた頃から、クレームを言われれば相当凹むと思っていたが、僕の場合、明らかに会社側に問題があり、自身に対する叱責しっせきではないと割り切ったので、至って冷静に受け止められた。


 駅を去るとき、大橋助役がこっそり教えてくれたうろな地下鉄の実態。


 今回のように運転士が急に発狂して列車を降りたのは五例目。


 一般的に徹夜勤務がある場合、それを終えたら『明け』といって、長時間働いた分、丸一日休めるが、うろな地下鉄にはそれがなく、仮眠は通常3時間以上のところ、2時間ほど。人手不足のために残業前提のシフトが組まれており、休日の呼び出しは日常茶飯事。


 給与は高卒25歳の場合、手取りで月20万円程度。ボーナスは月額の1倍前後。年度初めの定期昇給は永年500円。


 恐らく町の発展を見込んで敷いた鉄道なのだろうけど、実際は潤沢な資金を得られず、また、マネーを無駄遣いしている部分もあるのだろう。


 明日はこの上にある総合鉄道会社の駅で実習だけど、どうなることやら。鉄道会社の理想と現実のギャップは、思ったより激しそうだ。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 今回も無茶な経営をしている鉄道会社をお送りいたしました。実際に人口3万人の町(他の自治体へ乗り入れない形態)で通勤に特化した地下鉄を運営するとしたら、作中より酷い経営となるかもしれません。

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