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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
専門学校、職場体験編
91/120

制服姿で立つ駅

 駅事務室のインターフォンを押すと、『はい』と、社員と思しき人の応答があった。


「おはようございます! 職場体験学習生の鵠沼と申します!」


『あ、はーい、では有人改札までお願いします』


 僕は言われた通り、有人改札に移動、そこに立つ『高橋』という名札を付けた若い男性係員に学生証を提示し、体験学習の旨を伝えた。


 学校ではインターフォンを押すよう伝えられたが、やはり有人改札に顔を見せてからのほうが安全上好ましいか。


「体験学習の鵠沼さんですね。いま助役を呼ぶのでちょっと待っててください」


 僕は緊張しつつ「はい!」と返事をすると、続いて白髪混じりの中肉中背の男性が事務室の奥から現れた。


「はいはいおはようございます。助役の大橋おおはしです。今日はよろしく」


「おはようございます! よろしくお願いします!」


 僕はそのまま応接室へ通され、住所や自宅までの地図を用紙に記入させられた。事務室は改札口と隣接していて、その間には監視カメラの映像を流すブラウン管テレビのようなモニターが田の字配列で四台格納された棚があった。モニターに映っているのは、ホーム上や券売機前、改札口、外へ続く通路などであった。


 続いて薄暗い更衣室へ通され、応接室で受け取った地下鉄会社の制服に着替える。


 鉄道会社の制服を着る日が来るなんて……。


 僕は息を吞み、わくわくゾクゾクしながら、ゆっくりワイシャツに袖を通した。高校のブレザーとは全く違う、気の引き締まる制服に、鉄道を担う者の重みを感じる。


 着替え終わると大橋助役に案内され、さっそく通勤、通学客で少々混雑しているホームに立つが、ここまでの間、高橋さんと大橋助役、そして僕がうろな駅に降り立った際にこのホームで案内放送をしていた社員以外の駅係員を見ていない。現在は先ほどホームに立っていた社員の姿はない。


 体験学習とはいえ初めて鉄道会社の制服を着て立つホームは、先ほど客として立った場所と同じなのに、感覚が違う。行き交う人々が皆お客さまと思うと、僕らは彼らからすれば注目される存在。立つ場所はお客さまと同じなのに、発表会のステージやスポーツのコートに立っている、不思議な感覚だ。


「駅といえば電車が行き来するホームが一番目立つ場所だと思うけど、そろそろ電車が来るから、案内放送をするよ」


 言うと大橋助役は『まもなく電車到着します。おさがりください』と案内放送を入れた。まもなく電車が到着し、ブザーが鳴ったら『発車しまーす』と力なく喋る。


 ドアが閉まったとき、駆け込み乗車をした中年女性が持つショルダーバッグの紐がドアに挟まった。ドアを再開閉しなければ。


 しかし電車はそのまま発車。僕は再開閉しなかった理由を訊ねた。


「あのくらいなら大丈夫だよ。再開扉すると七秒くらい遅れるからね」


「あ、はぁ……」


 地元の電車は小さな荷物が挟まっただけでも数分間運転を見合わせるが、大橋助役によれば、紐が挟まっても運行上の問題はないし、駆け込み乗車に構っていたら電車の遅れはどんどん拡大すると、腑に落ちない表情をした僕に説明した。


「じゃあこんどは改札口に立ってみようか」


 なんだろう。思い描いていた駅の様子とどこか違う。なんというか、淡々としていて、あまりワクワクしない。ふと時計をみたら9時30分。17時までここにいるのはとてもしんどそうだ。


 改札口に通された僕は、改札窓口の脇にあるデスクのある椅子に座らされた。ここでは地下鉄指令室から発せられる声が聞こえる。


『ただいま9時30分。南北線11運用列車は1分遅れ、東西線20運用列車は1分30秒遅れですがどうしました~?』


 指令室からの放送は各駅や各列車に配信されるが、ここから僕は、鉄道会社の現実に直面する。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 更新が遅くなり、申し訳ございません。


 次回、鉄道会社の実態を鉄道業界に憧れる学生が齧ります。

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