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興味持っちゃったかも

「あーめだああああああ!!」


 山頂から折り返してうろな裾野駅前を通過した直後、急な大雨が三人娘を襲った。ゴールの支社ビルまでの残り7キロメートル弱、傘も差さずに歩かなければならない。


「寒い。さすがに電車乗って帰ってもいいんじゃない?」


「都! 線路は遠いしバスもタクシーも滅多に通らないゾ!」


 田舎ではよくあることだが、うろな町では線路と幹線道路は離れた場所を通っていて、道を逸れて駅へ行くには億劫な場所が多い。


「美守に言われるとなんかウザイわー」


「なんだとお!? ってかさあ、私らいまジャージの上着脱いだら下着透けて超セクシーじゃね!? 水の滴るイイ女ってヤツ!? これでイケメン欲情させて社内恋愛からの人事優遇ってね! ぎゃーはっはっはっ!」


「うわー、売れ残りオーラ半端ないわー」


「ちょっと都ちゃん! 思っても言っちゃだめだよ!?」


「はははっ! 灯里も酷いなあ!」


「ごっ、ごめんなさい! そんなつもりじゃ……」


 ワイワイガヤガヤしながら歩いてたら意外と早くラッパを吹く天使のステンドグラスが迎える支社ビルのエントランスに着いた。雨の日のステンドグラスは雲の上の世界を垣間見ているようでなんだか神秘的。ホッとしたら急に寒くなってくしゃみが何発か出たけど気にしない!


「ぶはーっ! やっと着いたー! 生きて帰ったどー!!」


「大雨のなかお疲れさまでした。これで全員揃いましたね。シャワー室がありますので利用したい方はお申し付けください」


「ねぇねぇ汐入さん? 私と一緒にシャワー浴びよう?」


 戻って早々、ジャージのチャックを外し、Tシャツをチラッと覗かせ、上目遣いでアピールしてみる。


「はははっ。僕が同意したら本当に一緒に浴びてくれるんですか?」


「へっ!? それは、えと、ここは会社ですよ……?」


「ですね。ほら、頬が赤くなって鼻水出てますよ? 早くシャワー浴びて温まってください。僕はまだ仕事があるので」


「そっ、そうですかっ。では、お先に失礼します!」


 イケメンは「お疲れさまでした」と微笑みながらビルの内部へ向かう私たちを見送った。


 はははっ、どうしよ私。『汐入さん』に興味持っちゃったかも。柔く綻びそうな顔は、いまは誰にも見られないように、そっと胸中に閉じ込めよう。

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