他社の社風
ハードなウォーミングアップが終わり、休憩を挟んだ私たちはうろな駅の近くにある中央公園まで移動し、整列した。これからうろな地下鉄と合同で高原までウォーキングをするんだけど、左斜め前から穏やかじゃない声が聞こえてくる。あっちの会社、なんかヤバい。
「おい!! お前らなにウォーキングアップくらいでへこたれてんだよ!! 実際の業務じゃ雨のなか傘も差さないで重いもの持ちながら走り回らなきゃいけないときだってあるんだぞ!!」
40歳くらいかな。指導員のメガネを掛けたスキンヘッドが地下鉄新入社員の前に立ちながらギャーギャー言ってる。みんな黙っちゃって雰囲気めっちゃ悪い。
「おい!! お前ら生きてんのか!! 生きてんだったら返事くらいしろよ!!」
地下鉄新入社員が声を揃えて、はい!! って叫んだ。
「お前らバカか!? はいじゃねぇんだよはいじゃよお!! こういうときは申し訳ございませんだろ!! 学生時代にバイトもしないで遊んだり勉強ばっかしてたんじゃねぇよな!? バイト禁止の学校だったらこの程度の教育はされてるよな!? あと返事にハリがねぇんだよ。うちの会社はどっかの会社みたいに安全のためならゆっくり走れとか言ってる余裕はねぇんだよ。キビキビ効率的に動いてくんなきゃ困るの。もちろん事故起こしたら厳しい処分は待ってるけどな!! だから効率と安全を両立させろっつー話なの。今のお前らじゃそれが出来そうにねぇんだよ。クビになりたくなかったらどうしたら生き残れるか考えろ。わかったか!!」
地下鉄新入社員はまた、はい!! って叫んだ。
どっかの会社ってうちの会社かな。安全部の人が少しでも危険を感じたら遅れは気にしないで列車止めろって言ってたし。
「えーと、うちの会社もそろそろ説明を始めましょうか。そうですね、えーと、これから三人一組になってうろな高原のチェックポイントまで歩いて往復してもらいます。駅には当社も地下鉄さんも監視カメラがありますので、電車に乗ったらバレます」
じゃあバスに乗ればいいんじゃね?
「バスにも監視カメラありますからね」
そっか。
「コースは自由ですが、16時30分までに支社の体育館に戻ってください」
我らがイケメンリーダーは苦笑いしながら説明した。あぁ、なんか私、この会社で良かった。
お読みいただき誠にありがとうございます!
私は地下鉄での勤務経験はございません。
また、地下鉄その他鉄道各社と今回のお話は関係ございません。鉄道会社の体質はご自身でよく観察して、疑問があればその会社に意見や質問をぶつけると良いでしょう。