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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
咲月と鯨の恋愛編
68/120

夢に向かって走る君、行き先のない私

 鯨と里山の公園でトレーニングをした翌日の月曜日。部活の練習メニューはまた江ノ島往復ジョグとなった。いつものようにウォーミングアップを兼ねて学校から海岸のサイクリングロードまでの道のり約500メートルを歩くような速さで走り、準備体操をしてスタート位置に辿り着く。この日も蒸し暑く、気持ちの悪い汗が前身から滲み出て、潮風が不快感を一層増幅させていた。


 スタートすると、やはりいつものように他の部員からどんどん引き離され、私は鯨の三歩先を走って倒れたり身体に異常が起きないか脇目で見守る。最初は平静な面持ちで走る鯨の表情がゾンビ化し始める3キロ地点を過ぎた辺りでは今回も例に漏れず、安定のゾンビ顔だ。


 それでも鯨は、ゆっくりだけど、夢に向かって真っ直ぐ走っている。私に先導される鯨は、本当は私よりもずっとずっと先を走っている。それはもう、手が届かないくらい、いや、いくら全速力で走っても、ただ日常の螺旋のなか、同じ場所をぐるぐると走っているだけで行き先なんてない私には、どうやっても追い付けるわけがない。


 遠い、遠いよ。この三ヶ月間いつも私の傍に居て、一緒に走ったり下校している可愛い年下の男の子の筈なのに、今もこうしてすぐ傍に居るのに、君の心はどれだけ遠く離れているの?


 やだな私、もう高校二年生なんだから、そろそろ将来やりたいことくらい決まってて、それに合わせて進学先や就職先を検討しなきゃいけない頃なのに、ただ走るのを楽しんでいるだけの体育バカだ。周囲を見回せば鯨以外にも、例えば本気で陸上選手を目指している部長とか、夢に向かって真っ直ぐ走っている人はちらほら見当たる。このままじゃ私、目的もなく彷徨い続けて、やがて訪れる就活では取り繕った言葉を並べて迷走して、虚言を吐くつまらない人間なんか当然誰も認めてくれなくて、なのに勝手に人格を否定された気分になって、他の子が次々と将来への切符を手に入れるなか私は取り残されて、偽りない本当の自分が分からなくなっちゃうかも。


 そもそも本当の自分なんて、まだ分からないけど。


 そんなことを堂々巡りで考えながら将来に絶望していたら、いつの間にか江ノ島から折り返してゴール地点に辿り着き、隣では鯨が掌で膝を押さえ前屈みになって息を切らしていた。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 これって鉄道の話だよね?

 はいそうです。


 鉄道の話って電車とか駅とか、鉄道について語るんじゃないの?

 それもそうですが、そこで働く人間にも色んなドラマがあります。私はそこも大事にしたいのです。


 そんな葛藤のなかこの章を綴っております(汗

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