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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
咲月と鯨の恋愛編
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将来の夢

 好きなことがあるかを訊いたら、鯨は困った顔をした。私が寝ていた身を起こして体育座りをすると、鯨も続いて身を起こした。


 陸上についての考えを流暢に語ってくれたから、その流れで会話を続けられると思ったけど、まずいことを訊いちゃったかな。


 場繋ぎと鯨に対して悪意がないと示すために微笑みかけると、鯨はチラッと私を見て目を逸らし、今度は横目で私の様子を窺った。


「うーんと、無理に言わなくてもいいんだよ」


 というより、無趣味なのかな。しかしそんな心配は無用だった。


「あ、いえ、僕、てつ、鉄道が趣味で」


 鯨は噛みながらも自分の趣味をちゃんと言った。


「鉄道? 電車の写真撮りに行ったり?」


「そういうのはあまりしないんですけど、電車に乗って出掛けるのが好きで」


 好きという割に陸上についての持論を語るときより口調が芳しくないのはなんでだろう。私はそれが気掛かりだ。


「へぇ、そうなんだ。私も電車で出掛けるの好きだよ。普段乗らない電車っていうのかな、江ノ電とか東海道線の熱海あたみのほうの丘の上から海が見えるところとか、普段は見ない景色を見るとワクワクするよね」


 目を合わせずボソボソと喋る僕に、片瀬さんは笑顔で応えてくれる。鉄道なんて一般人に忌み嫌われそうな趣味なのに、片瀬さんはそんな顔を全く見せない。こんな人なら、将来の夢について話してもいいかな。


「はい。それで、実は陸上始めたのは将来鉄道会社に入って電車の運転士になるためで」


「電車の運転士になるのに陸上? 鉄道研究部のほうが専門知識学べるんじゃない?」


 確かに会社によっては入社試験で鉄道の専門知識を問われる場合があるらしいけど、そういう会社はかなり稀な上、競争率が高く、尚且つ業界経験者の中途採用が中心で、学生にとっては非常に狭き門という。


「あー、えっと、うちの学校の鉄道研究部は模型を走らせるのが主な活動みたいで。一応鉄道についての研究とか学習はするみたいなんですけど、そういうのはある程度知ってるので、鉄道研究部に入るよりは陸上部で体力つけて、徹夜勤務に耐えられるカラダづくりをしたいなって」


「へぇ、スゴいじゃん鯨! 夢のために陸上やってるんだぁ! 私なんかただ走るのが楽しいだけなのに」


「片瀬さんは陸上の選手になろうとか……」


「はははっ、ムリムリ! 身体が思いもん!」


「えっ、そんなこと全然」


 片瀬さんの体型はごく平均的。本気で鍛えればもっと痩せられるだろうに、どうして諦めちゃうんだろう。


「それでもだめなの。肩が重みが掛かっちゃって」


「肩? 痛いんですか?」


「長距離走ると痛くなっちゃうの。短距離はそんな速く走れないし」


「治せないんですか?」


 走るのが楽しいのに勿体無いよ。やるだけやれないのかな?


「治す? うーん、別に故障ってわけじゃないんだよねー」


「故障じゃない?」


「うん、ほら、なんていうのかな……」


 片瀬さんが何を言いたいのか解らず、僕は首を傾げた。


「ああもう全部言わせるな分からず屋!」


「えっ!?」


 瞬間、片瀬さんは右手で僕の右手を掴み、それを胸に押し当てた。その時、僕は理解した。胸が重たくて肩が凝ってしまうのだと。恐らく平均的なサイズだと思うけど、走ると肩に影響するのだろう。


 あぁ、思ってたより弾力あるんだな……。


「あっ」

「わっ!」


 弾力を実感していると、片瀬さんに手を掴まれて前のめりになった僕はバランスを崩して彼女を押し倒してしまった。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 今回のお話では途中、試みとして点が咲月から鯨に替わりましたが読みにくくなっておりませんでしょうか。

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