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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
咲月と鯨の恋愛編

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訊かれたら困ること

「ねぇ、一口ちょーだい」


 通りを北へ進みながらみじん切りにされた玉ねぎと挽き肉の程よいバランス、そしてサクサクした衣が絶妙な味を出しているメンチカツを頬張っていると、片瀬さんが無垢な笑みでねだってきた。僕は抵抗を感じながらもメンチカツを差し出すと、片瀬さんは代わりに食べかけのコロッケを僕に差し出した。正直なところ、家族であっても他の人が口を付けたものを食べたいとは思わないが、片瀬さんを不快にさせたくないのでコロッケを軽くかじった。


「コロッケも美味しいでしょ」


「あ、はい」


「よしよしイイ子だ!」


 言いながら、片瀬さんは僕の頭をワシワシ撫でる。幼い頃に父や幼稚園の園長に撫でられたときのゴツゴツとした感触とは異なり、とても華奢でやわらかな感触だ。


「鯨ってさぁ、休みの日は何してるの?」


 片瀬さんでなくともよく訊かれるこのフレーズは、とても鬱陶しい。プライベートで何をしていようと僕の勝手じゃないか。なぜそこまで他人に干渉されなければならないのだ。ちなみに僕は休日、鉄道会社や同じく鉄道を趣味とする個人のホームページのほか、鉄道関係の雑誌を読み漁って新型車両の導入や淘汰される旧型車両の情報を仕入れている。この秋からは地元の路線に新型車両が導入され、時代の変遷を目の当たりにするだろう。鉄道の変遷は、その土地の時代の変遷でもあるのだ。同じ土地でも古びた車両が走っているのとピカピカの新型車両が走っているのでは印象が大分変わる。


「テレビ見たり、パソコンやったり」


 鉄道の趣味は偏見されがちで、同じ趣味を持つ者以外にはなるべく口外したくない。


「そうなんだぁ、じゃあさ、もし良かったら今度の日曜、一緒に出掛けない?」


「え、あ、はい」


 いくら尊敬している人とはいえ、休日くらい学校の人とは顔を合わせたくないが、断れない性格の僕は二つ返事をするほかなかった。

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