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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
咲月と鯨の恋愛編
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夕陽に向かって

「そんなに飲んで大丈夫? 飲み過ぎると脇腹痛くなっちゃうよ?」


 スポーツドリンクをペットボトルの半分くらい一気に飲んだ鯨は、一息ついた後の口付けから少し無理して飲んでいるように見えた。


「すみません。これくらいにしておきます」


「うん」


 鯨からペットボトルを受け取った私は残りを飲み干した。飲み終えて夕焼けを見ていたら気が抜けてしまい、ここから走って帰るのが億劫になってきた。走るのが好きな私にも、そういうことはよくあるのだ。今日は顧問がいないし、戻ったら他の部員は各自引き上げるのが通例。つまり戻っても誰もいない可能性が高く、それはサボってもバレない可能性が高いという意味でもある。これぞサボりの方程式。我ながらなんて頭脳明晰だろう。きっと将来は総理大臣とか皇族に嫁入りするくらいのデキるオンナになっているに違いない。そんな私を放っておく見る目のない学校の男子大勢はなんとも残念だ。とはいえ私は好きな人がいないから、付き纏われないのは好都合といえば好都合。


 あぁ、そんなことを考えてる自分が哀れだから、これ以上考えるのはやめておこう。それに、体力をつけたい鯨をサボらせるのは良くないか。


「ねぇ鯨、部活終わったら一緒に帰ろう? コロッケかメンチ買ったげるから、シャワー浴び終わるまで待っててもらっていい?」


 学校にはシャワー室があり、夕方は部活を終えた運動部員で混み合うけれど、私たちが戻る頃は最終下校時刻が近く、空いていると思う。


「いや、飲み物ご馳走になって食べ物までなんて…」


「バーカ。先輩相手に遠慮しないのっ」


 言ってデコピンすると、鯨は目を細めて額を押さえた。鯨はきっと上手く自分を表現できないだけで、ユーモアある心の広いヤツなんだと思う。本当につまらないヤツはデコピンなんてしたらムスッと迷惑そうな顔をするだろう。鯨の素顔を引き出すにはきっと、部分的でも私が対等な目線で接する必要がある。それで私と一緒の時だけでも心から楽しいと思える時間を過ごせるようになったらいいな。今の鯨は遠慮がちで、肩に力が入り過ぎているんだと思う。


「大丈夫! 私バイトしてるからそれなりにお金あるし!」


 バシッと肩を叩くとよろめく鯨。こういうところがマスコットみたいで可愛いとか言ったら流石に不快だろうから黙っておく。


「さて、あの夕陽に向かって走りますか!」


「あ、はい」


 あちゃー、滑ったか。イマドキ夕陽に向かってとか流行らないかなぁ。


 滑ったのが恥ずかしくて、復路は羞恥心を誤魔化すために少しペースを上げて走ってしまったけれど、鯨はバタバタと身体を大きく揺らしながら死んだ魚のような目でゴールまで付いてきた。


 コイツ、やればできるじゃん!


 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 後ほどTwitterに舞台となった土地周辺から見た夕陽のイメージ写真を掲載予定ですので宜しければご覧ください。

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