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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
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安全対策会議

 安全対策会議日、月曜日。うろな支社の会議室では駅社員や車掌、運転士、指令員、電車区、車両の製造や全般的な検査、修繕を行う『うろな車両ファクトリー』、安全部、運輸車両部、営業部、技術部、人事部の社員が集い、安全性強化についての協議や対策内容を発表する運びとなった。公言しないが、人事部は社員の素質や性質を見定めるために参加している節が強い。


 現在決定しているものでは、旅客りょかくが線路に転落する事故を防止するための新開発ホームバリケードの設置や、海岸線区間の線路や駅の高架化、災害発生時における避難場所の確保がある。 これに加え、先日発生した無線トラブルを受けて100億円の予算を組み、無線機の改良も決定した。本件についてはトラブルが発生した車両に対して緊急点検を実施したが異常は見受けられず、無線システムを従来の視点に囚われず多角的に見直す必要がある。


 多くの命や財産を預かる鉄道事業にとって安全の確保は最優先事項であり、うろな支社の今年度予算は無線改良を含み300億円にのぼる。また、今回の会議で上がった案については年間予算とは別の予算が組まれる場合もあり、安全に関する投資の割合は世界の鉄道会社でトップクラスである。


 9時丁度。うろな駅の梅太夫駅長、成夢、エレナ、洋忠、乙女ゲームと仕事の両立で寝不足気味の美鈴は一番乗りで会議室に入り、机に置かれた資料に目を通した。美鈴は土曜日から支社に出張し、本社の技術部とテレビ対談をしながら無線トラブルの原因究明や妨害電波の分析を進めていた。


「おはようございます」


 一同が資料に集中していると、安全部の女性社員が静かに扉を開けて入室した。ストレートの艶やかな黒髪をヨモギ色のシルクで出来たリボンで結び、高貴な雰囲気を放っている。ついでに、胸が平均よりやや大きい。


一流いちるちゃん!?」


「あら、成夢じゃない。お久しぶりね」


「成夢くん、一流と知り合いなの? 私は同期だけど」


「高校の先輩です。部活が同じ軽音部で、バイト先も同じスーパーでした。会社が同じなんてのはいま知りました」


 深沢ふかさわ一流さんは俺より二年度上の先輩だ。神奈川県鎌倉かまくら市出身で、実家は山間やまあいの大豪邸。凛とした黒いスーツの左胸ポケットに挟んだ名札から、現在は営業部で勤務していると判る。俺たちのような現場第一線での経験から始まる採用形態ではなく、最初から企画部門で計画や戦略を練るエリートコースの採用だろう。


「あら、先輩だなんて。私たち、もっと親密な関係じゃない」


 言って、エレナさんを見遣る一流ちゃん。対してエレナさんは首をかしげた。何これどういう意味のやり取り?


 俺と一流ちゃんは同じ学舎まなびやで過ごした高校時代の約一年間ほど交際しており、俺にとって初めての恋人だった。高嶺の花だと思ってダメ元で交際を申し込んだら、あなたの気持ち、とても嬉しいわ。と、あっさり受け入れてくれた。しかし、一流ちゃんが高校を卒業してからは互いに連絡を取るタイミングが合わなくなり自然消滅。それが今になって再会とは。しかも会社で。だが学校の先輩と再会なんてのはこの会社ではよくある話で、特段珍しくはない。


 あれこれ考えているうちに約50名の社員が集まり会議室は黒やグレーのスーツ姿でガヤガヤと賑わい、後は一人を残すのみとなった。


「おはようございます!! 今朝も元気ですか!? 鉄道を愛してますかー!? 今日も鉄道をより安全にするために気合いを込めますよ準備はいいですかー!?」


 バッと扉が開き、威勢の良い声が室内に響き渡るとともに、裏社会に居そうなガタイの良い男性が登壇し社員を見渡す。


「君は相変わらずだねぇ」


 駅長がやんわりした声で男性に話し掛けた。


「やあやあ梅太夫じゃないか! 元気にやっとるかい?」


 この男性、うろな支社安全部長の大社おおこそ徹男てつおといい、梅太夫と同期入社である。名前も体格に負けじとゴツい。この会社はこのような熱血漢が多い。


「おかげさまでね。さて、時間だし、いつもの号令をお願いするよ」


「よっしゃ。皆さん! 今日も元気に鉄道の質を高めてゆきながら、人間力も高めてゆきましょう! たゆまぬ挑戦こそが人生を輝かせ、老後はボケ防止にも繋がります! それでは皆さんご一緒に!」


 おはようございます! 今日も宜しくお願いします! と一同の声が響き渡り、会合が始まった。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 今回より『安全対策会議編』のスタートです。もしかしたらかなり濃い内容になるかもしれません。

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