表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
43/120

詩歌いの夜

 エレナさんに何か歌えと言われたが、ろくな曲がない。基本下ネタで、あれこれしようよというニュアンスの曲ばかり。俺はそれをエレナさんに打ち明けた。


「あ~、中二病ってヤツ? 若気の至りでどうしようもなく莫迦ばかなことばっか書いて。莫迦なこと‘ばっか’書いて」


「エレナさん、それ二回言わなくていいです」


「うん、そうだね。入社前はオヤジギャグなんか思い付かなかったのになぁ」


「オヤジ多いですからね~」


「だよね。うん、オヤジの影響受けたに違いない。そうだ、きっとそうだ。で、音楽だけどさ、即興でやってみてよ。元々音楽ってそういうものでしょ?」


「そうですね。じゃあエレナさんと一緒に曲作りしましょう」


「わかった。じゃあ私がテキトーにギター弾くから、成夢くんは演奏に合わせて歌ってみて」


「了解です」


 エレナさんはギターを抱え、二種類のコードをスローテンポで演奏し始めた。殆どの楽曲はこのコードの組み合わせで成立する。


「今夜~も~熱帯夜~胸はアッツイや~今宵はキミと愛を語りたいなベッドで~♪」


 俺が思い付いたままに歌うとエレナさんは不意に演奏を止めたので、どうしました? と訊ねた。


「今の歌詞はどういうことかな?」


「思ったままを詩にしたらこうなりました」


「ふぅん。でもさ、何かこう、夜の営みみたいなのと無関係な詩はできないの?」


「あー、どうでしょう…」


 マンションの一室で詩を浮かべるのは俺にとってはなかなか大変。詩は概ね緑地や海岸を散歩しているときか、寝起きにふと思い浮かんでは消えてゆく。この場で何か紡ぐとしたら、日常を題にした詩が妥当だろう。


「いま、ぼ~くは此処に生き~てる~、あなたと~ともに過ごす奇跡をうたにしながら~、明日あすの今頃、何を~してるだろう? そんなことはわからないけれど~、きっといま、この一時ときを思い出してる~、たと~え何があったとも~」


 とりあえず思い浮かんだままに歌ってみると、エレナさんがスローなメロディーに合わせて演奏をしてくれた。


「もう、そんな風に歌われたら照れるじゃん」


 演奏を終え、目を逸らしながらエレナさんは言った。


「惚れました?」


「ううん、別にそんなことない」


「ふぅん、そうですか」


「なによ生意気」


 相変わらずスパイシーなエレナさんに笑みで返す。だがそんな女性ひとを丸め込むのが俺は好きだ。だからといってあまりにも刺々しいのは御勘弁願いたいが。


 夜は段々と更けてきた。酒と詩を浮かべた影響なのか脳内の酸素が不足して、俺は思わず欠伸あくびをした。


「ねぇ」


「はい?」


「今夜、いっしょに寝よう。ベッドひとつしかないし」


「マジっすか!?」


 なんだこの超展開!? どうせ酔い潰されて床で寝てたら朝になりましたってオチかと思ってたけど!?


「寝るだけだからね。眠るだけ」


「え?」


 ◇◇◇


 翌朝。いや、もう昼に近い。俺は目を擦りながら起き上がると、エレナさんは卓でハーブティーを飲んでいた。


「おはようございます」


「こんにちは」


 おや、嫌味を言われてしまった。エレナさんちょっと不機嫌だぞ?


「いや~、昨夜はムラムラして生き地獄でした」


「なによ、私より先に大いびきかいて眠ったくせに。しかも横になって5分も経ってなかった」


「え?」


 マジか。結構ムラムラしてたのに。


 その後、俺は積極的に家事を手伝ったりポケットマネーでショッピングに付き合ったりと、一日かけてエレナのご機嫌取りに徹した。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 久し振りの更新でございます。今後もしばらくは更新間隔が長らく空く見込みでございますが、なるべく早期の更新に努めてまいります。楽しみにしていただいております皆さまには誠に恐れ入りますが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ