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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
42/120

エレナが音楽を始めた理由

 今夜はエレナさんと二人きり。あわよくばあんなコトやこんなコトをしたいところだが、急に襲い掛かったら俺の人生が社会的に終了するし、エレナさんに絶交されるのもわかっている。とりあえずここは雑談で心の距離を縮めよう。


 というよりも、こんなことを考えてるから距離が縮まらないし、イジリ甲斐があって頼れる姉ちゃんと想い人との間で心が揺れてるのか。まぁその辺は流れに身を任せて明確な答えを導き出すとしよう。


 ビールやチューハイのような豪快な酒は落ち着き、卓上には一本の赤ワイン、二本のグラスと一皿のカマンベールチーズがちょこんと並んでいる。


「エレナさんって学生時代は何してたんですか?」


 なんとなく気になったので訊いてみた。


「学生時代かぁ~。うち親が厳しくて中学までは真面目に勉強してたんだけど、高校生になってから会社入るまでは束縛されるのがイヤになって公園でギターの弾いてたかな。名誉ある職業か名高い企業に入りなさいって耳タコ具合に言われて、頭の中のモヤモヤをスッキリさせたかったんだ~」


 いま思えば、あの頃の私は少し不良じみていたのかもしれない。高大とも身の丈より背伸びした学校に入学させられ、成績は常に底辺近く。高校時代は定期考査の結果が出る度に名門校出身の両親に叱責され、溜まりに溜まったストレスを少しでも発散するため、近所の楽器店からギターを借りては楽器店のスタジオや公園や広場で独り善がりな詩を散布していた。借りていたギターは大学入学後にアルバイトをして買わせてもらった。それが今、この部屋にあるギターだ。


「凄いっすねエレナさん。俺なんかストレス溜まったら物投げたり嫌いなヤツに殴り掛かったりしてましたよ」


「ううん、私なんか全然凄くないよ。若気の至りが言葉の暴力になったか物理的な暴力になったかの違いよ」


「でも俺は物を壊したり相手を傷付けましたけど、エレナさんは歌ってただけだから誰かや何かを傷付けるってことはないじゃないですか。そこが俺との決定的な人間力の差です」


「人間力、か。なら私はかなり弱いよ。直接相手に言いたいことも言えずに独り言ぼやいて自己完結だもん。だったら成夢くんのほうが面と向かってる分立派だよね。暴力は良くないけど」


「衝動が抑えられなくて。今でこそ少し抑制力付きましたけど、その分ストレスが発散できなくて、深みに嵌まると自分の考えが善良で人間のことわりに合っているのか疑い出して、それを確かめるために色んな人の価値観を垣間見れるアニメとか映画なんかを鑑賞してるってトコです」


「成夢くんがオタクやってるのってそういうことなの!?」


 驚いた。てっきり女の子のキャラクターが可愛いからかと思ってた。


「そういうのが多分ですね。キャラ萌えってのもありますけど」


「やっぱ萌えもあるんだ…」


「そりゃ男ですから。今だってエレナさんに萌えてますよ?」


「はははっ、大人をからかわないのっ」


「え~、からかってませんよ~。いくらか本気ですよ?」


「もう。あ、そういえば成夢くんって音楽やってたんだよね?」


「はい。高校時代は軽音部でした」


「じゃあ何か歌ってよ」


「は!?」


 ろくな持ち歌ねぇし歌うの恥ずかしいわ!


「私をからかった罰」


「だからからかってませんよ!」


「聴きたいな~。聴かせてくれたら今夜なにかしてあげる」


「マジっすか歌います!」


 この子ホント単純よね。


 こうして成夢はエレナの前でシング・ア・ソングする運びとなった。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 更新遅くなりまして申し訳ございません!


 これから10月半ば頃まで更新ペースが少々遅くなる見込みでございます。

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