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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
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エレナとサシノミ

 成夢とエレナは海浜公園駅前のパン屋で明日の朝食を調達し、バスに乗ってエレナの住むマンションに到着した。昇降口にあるユビキタスのロックシステムに成夢は興味津々だった。


 おや、エレナさんの香りがしないぞ。


 玄関が開いた途端、成夢は思った。通常は玄関から家庭独特のニオイがするものだが、部屋のあちこちに無香の消臭ビーズを設置しているため、それが吸収されているのだ。


「おじゃましまーす」


「散らかってるけどごめんねー」


 明かりを点けながらエレナは言ったが特に散らかった様子はなく、コミックスが山積みになっている成夢の部屋と比較するとエレナの部屋は無の空間に近い。綺麗に掃除された床面やシステムキッチン。リビングのテーブルには何も置かれておらず、ベージュのソファーや絨毯にはシミひとつない。


 エレナさんイメージ通りしっかりしてるなー。料理できるしツンデレだしからかいたくなるし。


「成夢くん仕事はどう?」


 缶ビールで乾杯を交わし、ぐいぐいと呑んで一息ついたところでエレナに問われた。


「そこそこっすね。相変わらず鉄道はよく分かんないし、ダイヤグラム見ると目眩がしますよ」


 ダイヤグラムを一言で表すと、列車のダイヤを『スジ』と呼ばれる棚田状の斜線に表して、どの列車がどの駅にいつ到着するか、どこで他の列車と待ち合わせをするか等が一目でわかる表であるが、過密路線は紙面にスジがびっしり張り巡らされており、慣れないと見ているだけで混乱する。


「あぁ、あれは私も苦手だわ。洋忠なんか最初の頃は頭掻きむしって発狂したのよ?」


「はははっ、容易に想像できます」


「うわあああ!! 三次元もダメだけど一次元もダメだあああ!! ってね。お忘れもの取扱所だったから絶対ホームに響いてたと思う」


 エレナの物真似に成夢はクスクスしながら言う。


「エレナさん、結構ユーモラスですよね。お客さまの声に書かれてた『ひんぬー乙!』とか普通に読み上げちゃうし」


「あぁ?」


「すんません」


 エレナさんの『あぁ?』はメッチャ怖い。眉間にかなりシワ寄ってる。この人元ヤンじゃね? と学生時代を想像してしまう。


「っていうか貧乳じゃないからね?」


「それは見せてくれないとわかりませんね」


「胸元しょっちゅう覗いてるくせに」


 ムスっとして紅潮するエレナさんも可愛いな。


「バレてましたか。クールビズだとボタン一つ開けるからついつい」


「もう」


 この人は色んな顔を持っている。定番のツンデレ、接客時の気品溢れる大和撫子、ひんぬー乙! とか読み上げちゃうお茶目なトコ、客から俺ら後輩たちに苦情が寄せられたときのフォロー。俺らの代わりに怒られるのに俺らには一切キツい当たりをしない。これは本当に尊敬するし、俺もそういう先輩になりたい。


「ねぇ成夢くん、夜はまだ長いし、これから何する?」


 なんだその意味深な台詞は。


「そうっすね、とりあえず‘愉しい’コトしましょう」


 せっかくサシだし夜は長いし、今夜は思いっきり楽しもう。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 こんな感じでダラダラお送りしておりますが、次回はどんなダラダラが待ち受けているのか…。お楽しみに!

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