表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
39/120

サービス改善会議

「まもなく4番線にー、快速ウィンディー湯海行きがー、3つドア15両編成でー到着いたしーますっ。黄色い線の内側へお下がりくだーさいっ」


 9月2日、月曜日の13時22分。成夢は一郎とペアでホームの監視をしていた。一郎は構内放送をしながら監視台に立ち、成夢は監視台から約200メートル後方の10号車付近に立っている。うろな本線の一部列車が10両編成から15両編成へ増強され、混雑が緩和されたと同時に監視しなければならない責任範囲が増えた。


 優等列車のため混雑する快速ウィンディーであるが、14、15号車はボックスシートを占領できる程度の空席がある。3号車から11号車にかけて混雑しているため空いている車両はあれど十分に採算性があり、消費電力の少ない新型車両の導入が進めば利益率は更に上がる。


 鋼鉄車両を使用した13時24分発の快速ウィンディーが発車したところで監視は終了。一郎と成夢は駅長事務室の隣にある会議室へ移動。この後すぐ、中央公園の木陰で駅長の梅太夫、洋忠、エレナを含む五人でのサービス改善会議がある。白い壁の質素な会議室より、ピクニックや酒の席のほうが意見が出やすいため、晴れの日は公園での会議が通例となっている。


 後に到着した成夢と一郎は既に三人が待つレジャーシートに腰を下ろした。


「はてはて、何か案はございますかな」


 梅太夫が声を掛けると、はいはいはーい! と洋忠が頭の高さまで手を上げた。


「無料のタウンマップが必要だと思いマッスル! この前、初めてこの町に来たと思われる高校生くらいの女の子がボクに町について訊いてきたんだよね。んで利口なボクはふと思った。そういやこの駅には冊子タイプのマップを置いてないと。観光地としての需要も増しつつあるし、土地勘のない人にも親切な駅にしなきゃとね!」


「あら、洋忠にしてはまともなこと言うじゃない」


「キサマァァァ!! 洋忠してはとは何事だぁ!! では腐れ三次元よ、キサマは何か優良提案があるというのか!?」


 蝉時雨が掻き消されるほどの怒声を上げた洋忠に、周囲の人々が注目する。


「そうね、優良かどうかはわかんないけど、鉄道ってすごく身近な存在なのに、社員と私たちの距離はちょっと遠い気がするの」


「あ、それ俺も思います! なんつーかこう、制服着てるからとか事務的なやり取りが多いとか色々思うんですけど、制服は仕方ないにしても後者はウチラ次第でどうにかなりそうだよなって」


「でしょ!? さすが成夢くん!」


「若いっていいよなぁ! 色んなこと考えられてよぉ! オッチャンなんか生活するために働くくらいの発想しかないからよ、こういうのは若手に任せるのがイチバンだって思っちゃうよね~」


「ほほほほほ、若い力を活かさないとまた破綻しかねないからのぅ。僕ら年寄りは自治体との交渉とか現場をしっかり守るのが役割ってところかなぁ」


 言いながら、梅太夫は万年筆で社員手帳に意見の要約を書き込む。これを基に作成した資料を支社や本社に提出し、サービス改善へ繋げてゆくのだ。今日もこうしたざっくばらんなやり取りのなかで新たなサービスの種が出来た。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 久しぶりにエレナ登場。ちょっとだけw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ