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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
37/120

息抜きの研修

 作文を書き終えたらランチタイム。といっても社員食堂へは移動せず、室内後方に用意された一食千円の幕の内弁当と500ミリリットルペットボトル入りの緑茶を各々受け取り、デスクでいただく。ちなみに入社試験でも同じ方法を採っている。


 成夢と美鈴はいただきますを言って、キュウリの柴漬けに箸を伸ばし、コリコリ噛み砕いた。


「大辻さん、作文書けましたー?」


「思いつくままにダラダラホイホイと。昇進懸かってるのにこの堕落っぷりはウロ駅の空気に呑まれてるのと、本来の自分の性格が成せる業だと思う。美鈴さんはどうよ」


 うろな駅を『ウロ駅』と略称で呼称した成夢は力なく答え、美鈴に問い返した。


「私なんかダメですよー。ネットで声投稿やりたくて接客で鍛えればコミュ障治るかなーと思って入社した紛いものですから」


「それがあっという間に窓口の看板娘」


「一部の方々が可愛がってくれるんですよ。抑揚つけて喋るとアニメ声になりますから」


「俺も特技欲しいなー。ウリがなんもねぇ」


「お疲れさまー。暇だから混ざっていい?」


 背後から二人の間に割って入ってきたのは人事課の咲月。暇だと言いつつコミュニケーションを取り、当然ながら二人のポテンシャルに探りを入れに来ている。


「お疲れさまですどうぞどうぞ!」


 言って、成夢は空いていた自分と美鈴の間のイスを引き出して咲月を座らせた。


「ありがとう。二人とも最近どう?」


 今年度の新入社員は咲月が採用や教育を担当する一人のため、成夢や美鈴も入社試験時から面識がある。


「俺は鉄道会社ってこんな感じなんだって驚愕しつつエンジョイしてますよ! イメージ通りオカタイ感じもありますけど基本的に和気藹々としてて働きやすいです」


「うろな駅だもんね! あそこはだらしないオヤジが多くてね、特にいっちゃん」


「小出さんヤバイっすねー。女性の先輩追っかけ回してます」


 エレナさんの膝枕は俺の指定席にしたいのだが、指定券欲しいのになかなか発券してくんないんだよな~。空席なのに勿体ぶりやがって。


「あれに絡まれるとホントめんどくさい。六会さんも気を付けなよ?」


「さすがに未成年の私には手出ししませんよ。それより大辻さんと高田さんがイチャイチャしてくれないかと妄想して興奮する日々を送ってますですデュフフフフ…」


「おーっと、残念ながら俺にBL的な趣味はないぞ」


「でも高田さんにその気があったらどうしますかぁ!? ハァ、ハァ…」


「はははっ! うろなは楽しそうでいいなあ。私も戻りたい」


「戻れないんですか?」


「助役ポストが空けば戻れるかもしんないけど、まだ人事始めたばっかだし、未来ある若者を育てるのって、楽しいじゃん?」


「俺と四つしか離れてないのに年寄り臭いこと言わないでくださいよ~」


「だって、王子様が現れないんだもん! 心は老いてく一方よ?」


「片瀬さんならその気になればモテると思うんですけどね~」


「大辻くん、昇進試験受けたら無条件で合格!」


 成夢の顔を見て親指を突き立て、舌を出して口角を舐めるポーズを取る咲月。


「この会社って、おだてに弱い人多かったりします?」


 エレナさんもおだてたら評価上がるわよ~とか言ってた記憶がある。


「お調子者が多いからね。大辻くんも割と弱いでしょ」


「そりゃ麗しきお姉さまにおだてられたら鼻の下伸ばしまくりですよ」


 研修も駅と同じく和気藹々とした雰囲気のなか無事に終了。変革期を迎え日増しに忙しくなるうろな支社管内新入社員のちょっとした息抜きとなった。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 こんなストーリー誰得なのかと訊かれると鉄道会社志望の方が事前に社内の大まかな雰囲気を知れるくらいのメリットしかありませんし、彼らにとっても同じ業界でも雰囲気が大きく異なるので必ずしもメリットがあるとは言い切れません。


 町長さんやショッピングモール、教育を考える会など大人の事情も入り混じるうろな町の一員という感じで鉄道も運営されておりますw

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