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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
31/120

電車とバスと創作活動

 満席の電車に乗り込んだ私は、海側の窓を正面に丸い釣り手を垂直に捻って掴み、高架からの車窓を項垂れ気味に見下ろす。この車両の立席客は30名程度で十分空いており、パーソナルスペースは許容範囲だから、居心地はさほど悪くない。


 ちらり周囲を見回すと、スマートフォンや文庫本、新聞へ顔を傾ける者が多数。彼らはいま、どこの世界を旅しているのだろう。わからないけれど、電車を降りたらこちらの世界へ復帰してほしい。おかしな方向に捻じ曲がった手足や、破壊されたボディーから飛び出した内部のパーツを見るのは良いものではない。


『まもなく~、海浜公園~、海浜公園~、お出口は~左側です。海浜森林線はお乗り換えです』


 少し考えごとをしている間にもう海浜公園駅に到着した。電車内での作曲を諦めた私はそのままバスへ乗り換えた。


 バスは海辺の駅から北へ向かい、10分も乗っていれば少し先に森が見えてくる。着席してぼんやり車窓を眺めていたら、あと二停留所で自宅の最寄りだ。残り2分で曲は浮かばないだろうか。


 バスガス爆発…。


 馬鹿か私は。


 バスバスばすすーオムニバス~♪ ボクはみんなのはたらくくるま~♪


 あ、これイケる。バス協会のイメージソングに出来そう。


 しまった。余計なこと考えてたら最寄りの停留所に着いてしまった。私ってどうしてこうも要領が悪いのだろう。


 悔やんでも仕方ないので、運転士に礼を言って定期券を見せながら降車。停留所から3分ほどで防音対策バッチリの3LDK賃貸マンションに到着。築2年半ほどのこのマンションでは昇降口や部屋の玄関はMelonとユビキタスシステムをキーに使える。私は就職のためうろなに引っ越した2年前の3月中旬からずっとここで暮らしている。故郷の藤沢は震災直後で食料不足や計画停電、銀行の営業時間短縮等で生活に不自由しているなか、家族を置き去りにして引っ越したのだ。


「ふぅ…」


 最上階の501号室。玄関の扉を閉めて施錠、更にチェーンロックを掛けてヒールを脱ぐと溜め息が出る。廊下とリビングを通過して寝室に入り赤いジャージに着替え、玄関脇の洗面所で手洗いとうがいを済ませると再び寝室に入り、高校時代にアルバイトをしてやっとの思いで抱き寄せたクラシックギターを持ち出し、リビングから南向きのベランダの向こうを見渡す。18時を過ぎている空は茜色に染まりつつあり、心を無にせる刹那が私は好きだ。


「なが~れる雲に想いを馳せれば~、きっと~きみ~のも~とへ飛んでゆけるね~。たか~なるこの胸の鼓動は~オレ~ンジの空が隠して~くれるかな~」


 なんとなく思い浮かんだままに口ずさんでみた。ベタ過ぎるかな? それにちょっと青春くさいような気もする。


 っていうかそれより先に明日の練習しなきゃ!


 明日は中央公園で夏祭りが開催される。私はその特設ステージで大辻くんや洋忠、心南海こなみとバンドを組んで音楽を披露することになっている。私はギター&ヴォーカル、大辻くんは8弦ベース、洋忠はドラムとコンガを、心南海はキーボードとDJを曲によって使い分ける。


 さて、ここには私しかいないから、クラシックギターを弾きながら歌おう。


 1、2、3、4♪


「青いうーみ緑のやーま、Heartwarmingなeveryone! さあ~ココへ集え! Welcome to the URONA TOWN!」


 これは出だしとサビの歌詞だが、曲ラテン調でリズミカルに演奏して約3分。湘南テイスト丸出しのこの曲がうろなのイメージに合うか定かじゃないけど、あくまでも私個人のイメージソングとしてなら大丈夫だろう。


 あぁ、久しぶりのステージ、なんだか緊張するなぁ。でも、ちゃっかり楽しんじゃおう♪ だって、それが音楽だから。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 バンドでは清水さんと小林さんにお手伝い願おうと考えておりましたが、別のバンドを組んでいらしたので急遽ヴォーカルのエレナにギターを持たせ、成夢はキーボードからベースに変更。そして音楽できそうな心南海を引っ張り出しましたw


 ということで遅れ馳せながら次回から夏祭りの模様をお届けします♪

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