表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
3/120

鉄道路線のごあんない

 10時過ぎ、成夢は退社点呼を済ませて風通しは悪いがそれなりに涼しい半袖ワイシャツのクールビズ制服から暑苦しい紺の縦ストライプが入ったスーツに着替え、うろな駅6番線の『うろな本線』ホームに立ち、まもなく到着した東へ向かう客のまばらな普通電車に乗り込んだ。これが海水浴シーズンになるとリア充がウジャウジャしだすのだ。


 うろな本線は『本』をとって『うろな線』と呼ばれる場合が多い。いま到着したのは上部に細く青いライン、窓を囲うクリーム色、下半分は上部と同じく青く塗装された鋼鉄製の古い車両で、片側3ドアの10両編成。車内中央部は左右それぞれに四人掛けのボックス席が二つずつ、ドアの脇には二人掛けのレールと平行に設置された、窓を背にして座るタイプの席がある。ボックス席のようにレールとクロスする座席と、窓を背にする座席を組み合わせた配置を『セミクロスシート』と呼ぶ。


「ご乗車ありがとうございます。うろな~、うろなです。うろなみなみ線、うろなきた線、地下鉄東西とうざい線、地下鉄南北なんぼく線はお乗り換えです。6番線は普通列車海浜公園かいひんこうえん行きでーす。発車まで1分ほどお待ちくだあーさいっ」


 車体の色であるが、地上路線の窓を囲う色は三路線ともにクリーム色。うろな南線は上部の細いラインと下半分が赤、うろな北線は緑に塗装されている。座席配置はいずれもセミクロスシートとなっている。


 地下鉄は東西線がステンレス製の片側4ドア車体に水色の帯。南北線はアルミ製の片側3ドア車体に緑の帯を纏っている。座席配置はレールと平行に座席が配置された『ロングシート』である。


 構内放送をしているのは助役の小出こいで一郎いちろう。『どうせ俺はあのイチローにはなれないさ』が口癖の42歳。これまでの人生を振り返ると送りバントの繰り返しだったとか。妻に怒られて駆け込むのは自宅の最寄駅前にあるスナック。ママに頭をなでなでしてもらうのが至福のひとときだという。


 そんな一郎がスイッチを押して、発車メロディーが流れる。成夢は先頭の10号車に居るので、階段のある5号車付近に立つ一郎の姿は見えないが、通りがかりに一言挨拶を交わしている。


「6番線から海浜公園行き発車しまーす。次はひがしうろなに停まりまーす。ドア閉まりまーす」


 圧縮空気の音を発ててドアが閉まり、古びた電車はゆっくり加速してゆく。成夢が座っている進行方向右側のボックス席からは、程なくして製油工場と黒く淀んだ海が見えてきた。しかしその景色は次の東うろな駅を出ると一変する。


「次は~終点~海浜公園~海浜公園~。海浜公園より先へお越しのお客さまは、この後階段渡りまして隣のホーム、3番線から発車いたします~10時25分発~、普通列車~桃源郷とうげんきょう行きへお乗り換えくださ~い」


 4分後、東うろなを出た電車に広がる景色は息を呑むほどきらきらきらめく大海原。電車はそれを見下ろすように山を切り崩した崖っぷちをガタゴト激しく揺れながら豪快に飛ばしてゆく。列車の速度は時速100キロメートルほどだ。


 成夢はまだ住み慣れない様々な顔を持つこの町の景色を見なが 、少しずつ馴染もうと考えていた。


「まもなく~、終点~、海浜公園~海浜公園~1番線到着~お出口は左側で~す。うろな線の桃源郷方面と、うろな南線、海浜森林かいひんしんりん線はお乗り換えで~す。どなたさまもお忘れものなさらぬようご注意ください~ご利用ありがとうございましたー 」


 海浜公園駅は、その名の通り広場になっている公園や海水浴場といった観光スポットへの最寄駅。


 だが成夢はそれらのある方向とは逆の北西側へ進み、白い2LDKの賃貸マンションを目指し、バスへ乗り込むのだった。成夢は帰ってからもあることをしなければならず、多忙なのだ。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 まさかの1000字超えwww


 さて、そろそろ成夢についてご紹介いたしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ