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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
27/120

魔法使いになるには

 よく晴れた6月18日、火曜日の10時過ぎ。成夢、エレナ、洋忠の三人は旅行商品として売り出すハイキングコースを視察するため、登山口のあるうろな裾野駅の改札前に集合した。成夢とエレナは海浜公園駅が自宅最寄りのためここまで同行。西うろな駅周辺に住む洋忠は二人より1本後の電車で到着した。


 うろな裾野駅は券売機と改札機がそれぞれ三台ずつしかなく、窓口は有人改札の隣にひとつだけポツリとあり、改札業務に当たる係員が兼任する小さな駅だ。今回はここから舗装された緩やかな斜面を登って隣のうろな高原駅を目指す全長4キロメートルほどの軽いハイキングだ。


「アンタそんな体型でハイキングできるの?」


 洋忠はベージュの半ズボンと、黒地にピンクのラインで魔法少女が描かれたSサイズのTシャツを着用しているが、だらしなく出っ張った腹がやむ無くヘソ出しスタイルになっている。Sサイズを選んだ理由は、ボクはブタ肉ではないと世に証明するためだとか。


「ハッハッハッ! 学生時代は伝説の新幹線『スーパーやまびこ』と比喩されたこのボクはハイキングどころか登山のプロなのさ!」


 エレナは腹を余計に出っ張らせて高笑いする洋忠を直視できず目を逸らした。


「どこがスーパーやまびこよ。鈍行にも及ばないでしょ」


「やかましいわ魔法使いになる資格を失いし三次元!!」


「魔法使い?」


「そうさ! ボクは魔法使いになるため修験者の道を30年間歩んできた。とうとう残り6年で魔法を手にするのだ!!」


「なにそれアニメのネタ? 大辻くん知ってる?」


 エレナが問うと、成夢は苦笑してその場を逃れようとした。


「知ってるんだね」


 エレナに睨まれた成夢は仕方なく頷き、でもこの場では言いたくありませんと返した。


「まったくキミは常識がないな三次元。なるたんが困っているではないか~」


「ごめん大辻くん。っていうかなんなのよキモオタ! 気になって夜中モヤモヤしてギター振り回しそうじゃない!」


 エレナは高校生の頃からギターを始め、大学を卒業するまでたまに公園で引き語りをしていた。

「勝手に振り回してろと言いたいところではあるが、ボクは優しいから特別に教えて授けよう」


「いや、エレナさんは知らなくても…」


「ううん、知りたい。じゃないとモヤモヤして大辻くんをギターで叩きそう」


「マジっすか!? 興奮しますハァハァ…」


「大辻くん!?」


 成夢は犬の『おすわり』のポーズをとり、舌を出し息を荒らげている。


「イカン! なるたんが精神崩壊してしまう! 三次元よ、耳と心を澄ましてよ~く聞け!」


「う、うん」


 大したことは期待していないエレナであるが、何故か緊張で唾を飲むと、たまたま爽やかな風が吹いて心頭滅却させてくれた。


「じゃあ言うぞ三次元!! まったくなるたんにまで迷惑をかけてこんな常識を教えなければならんとはけしからん!!」


「いいから早く言いなさいよ!!」


 エレナに急かされた洋忠は、一度ぐふんと咳払いをした後、深呼吸した。


「36歳まで!! すぁんじゅうるぉ~く歳までズッコンバッコンズコバコバコーン!! しなければ魔法使いになれるのだー!! ハッハッハッハッハーッ!! どうだキサマにはもうそんな資格などないであろう!!」


 体型からは想像できないほどの速さで腰を前後させる洋忠の前を通りかかった、背が低く頭のまぶしい老夫が頬を垂らしニヤニヤしながら杖を突いてゆっくり歩いてゆく。


「ごめん、意味わかんない」


「大丈夫ですよエレナさん! たとえ魔法使いになる資格がなくても俺はあなたをお嫁さんにしますから!」


「えっ!? 大辻くんどさくさ紛れになに言ってるの!?」


「いやーヤバイっすよジーンズ生地のスカートと黒いジャケットシャツとタイツ! 加えてインナーの白いTシャツがその奥の世界を見せてくれそうでそそります!」


「もう。わたし、ときどき大辻くんがよくわからない」


 エレナに呆れられた成夢は胸に何かが詰まるような感覚に見舞われ、さすがに欲望を露にし過ぎたかと少し反省したが、この男はきっと同じ過ちを繰り返すであろう。


 歩き始める前からハプニング発生のハイキング。エレナは先が思いやられた。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 ここでうろな町の皆さまに鉄道路線のピンポイント案内でございます。


 うろな南線は南うろなから北へ向かい、高架駅(新幹線やJR札幌駅などのような高い所にある構造の駅)であるうろな駅に停車、そのあと再び南へ向かいUの字状に進んで海辺にある工業地帯のうろな新田に停車。うろな新田からは一気に北へ上がり、終点の海浜公園に停車します。これらはR300というかなりキツいカーブです。なお、うろな駅とうろな新田以外は高架ではなく地べたにあります。


 一方でうろな町内は海浜公園を除く全て高架区間であるうろな本線は、うろなから東へ向かう際、南への緩やかなカーブを進み東うろなに停車。東うろなからは海岸やうろな南線を見下ろしながら緩やかに北へ向かい、海浜公園駅に到着します。


 こんな感じで把握していただけましたでしょうか(^^;

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