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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
25/120

混雑緩和

 6月15日、土曜日。曇り。うろな駅において近頃は特に大きなトラブルはないが、理一の報告によると、5月31日の18時15分頃に痴漢と思しき教育関係者の男から事情聴取を行ったという。彼については確固たる証拠が掴めなかったため不問としたが、痴漢対策と冤罪対策の双方を強化する方針を固めることとした。


 もう一件、社内で注意事象があった。ある社員が更衣室にあるロッカーの扉に水着姿の女性のイラストを貼り付けていたため駅長の梅太夫が本人から事情を訊いたところ、ロッカーの内側はスペースがいっぱいで貼りきれなくなったため、皆にも見える外側に貼り付けたとのことであった。梅太夫が本人にイラストを取り外すよう求めたところ、他の社員が鉄道車両の写真を貼り付けていることは認め、なぜイラストは不可であるかと反論されたが、描かれているキャラクターが15歳であることを指摘されたため、取り外さざるを得なくなった。つまり、梅太夫はキャラクターを知っていたのだ。


 それはさておき、きたる7月6日にダイヤ改正が実施される。今回のポイントは、うろな本線へ新型車両が導入されること、快速ウィンディーがショッピングモールの最寄駅である東うろな駅に停車すること、一部の列車が10両編成から15両編成に増強され、混雑緩和と着席チャンスの向上を図り、通勤通学や買いもの等で疲れた人々に快適な空間を提供すること、うろな北線のうろな駅~うろな高原駅までの線路を新設し、並行するうろな本線の混雑緩和と利便性を向上し、自然豊かな町西部への観光促進を図ることである。


 また、今夜は東うろな駅のホーム拡幅工事を終電後から初電前まで夜通し実施される。これにより、旅客転落のリスク低減と混雑緩和を図る。


「7月のD改ってさ~、会社の目論見どおりに行ったら商店街潰れちゃわない?」


 15時頃、そう言う心南海はショッピングモール内のカフェテリアチェーン店でエレナと向かい合いながらアイスカフェラテを啜っていた。今日は女水入らずのデートだ。店内は主に若者で賑わっており、ほぼ満席状態だ。心南海の話を聞いたエレナは、商店街の落ち着いた喫茶店でゆっくりコーヒーを飲みたいと思った。『D改』は『ダイヤ改正』の略である。


「なんかね、うろな駅の中に飲食店街とか菓子店とか色々造って、商店街から商品とか材料を仕入れて共栄する戦略なんだって」


「駅の開発って結構時間かかるじゃん。完成は来年3月のD改でしょ?」


「そうだよね~。それまでの間、商店街は持ち堪えられるかな? お弁当屋さんはうろな駅御用達だけど」


「あと酒屋さんはいっちゃん御用達~」


「あのオヤジ、近頃アタマ撫で撫でしてくれってうるさいのよね~」


 言って、エレナはブラックのアイスコーヒーを一口啜った。


「えれぴーはなるむーだけ撫でたいんだよね」


「大辻くんは弟みたいな感じだもの」


「でも二人とも息ピッタリだし、結婚相手にはいいんじゃない? えれぴーもう25だし」


「そういう心南海はどうなの?」


「私はまだ19だし、まだ、ちょっと怖い。プラトニックには憧れてるけど、ね」


 心南海は苦い笑みを浮かべ、視線を斜め下へ逸らした。


「ごめん。そうだったね」


 心南海の過去を知るエレナは、詫びながら自分の過去も思い出していた。


「ううん、気にしないで。えれぴーだって色々抱え込んでるんだから」


 視線を真っ直ぐに戻した心南海は、ぎこちなく微笑んだ。


「ありがとう」


「いえいえ。ご馳走さまですセンパイ!」


「えっ?」


 この後、エレナは心南海にクレープをご馳走し、衣類を数着を買い与えて一件落着。エレナの財布の混雑はだいぶ緩和されたそうだ。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 ようやくリアルタイムに追い付きました!

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