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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
24/120

ラッシュアワー

 7時30分、成夢はうろな本線上りホーム6番線、前寄りの8号車乗車口付近に立ち、人が溢れそうなホームを監視しながら満員電車の発車補助を行っている。駅構内は無言の通勤客で殺伐としており、ラストにして最も緊張する業務だ。


 ホームに立つときは線路側の脚を斜め前に出して立ち、人と接触しても線路に転落しないよう注意する。また、社員の場合は黄色い線より2本外側の点線まで踏み入れて良い決まりであるが、なるべく黄色い線からはみ出ないようにする。


「5番線ドア閉まります。次の電車は6番線に続いてまいります」


 5番線の監視台に立つ豊茂が放送を入れると、停車中の電車はドアを閉めた。


「お下がりください6番線に電車入ってきております」


 6番線の監視台に立つ理一が放送を入れたところで5番線の電車はゆっくり、ゆっくり慎重に動きだし、向かい側の6番線には次の電車が時速15キロメートルほどで入線してきた。朝のラッシュアワーは前の電車が動き始めた頃に次の電車が入る繰り返しで、同一方向へ向かう列車を2本停められるホームの構造をフル活用している。また、各車両の前に係員が立っており、監視台のある5号車と、見通しが悪い8号車前は正社員、その他の車両の前には契約社員とアルバイト社員が立って、すし詰め状態で閉まらない車両のドアを手足を使い無理矢理閉める。


「おはようございます! うろなに到着です! 7時33分の発車です!」


 電車が停車しドアが開いた途端、成夢は理一の放送を消さないよう拡声器を使わず声を張り上げた。ラッシュアワーの上り列車は全て桃源郷行きのため、行き先は言わない。車内の3割程度の旅客がぞろぞろ流れ出し、代わりにそれを上回る数の旅客が互いを押し合いながら乗車する。無表情または睨むような表情の彼らは日本社会の象徴で、自分たちの職場は浮世離れしていると切実に感じる成夢。


「割り込みはおやめくださーい!!」


 特にトラブルが発生しやすいラッシュアワー。マナーの違反を見掛けたら即刻注意しないと口論や暴力事件に発展する可能性が高まる。割り込みは何故か女性に多く、乗車口に並んで欲しいと社員一同頭を抱えている。


 到着から1分後、理一は発車メロディーを鳴らし、成夢の合図を確認し、頃合いを見計らって車掌にドアを閉めても構わないと合図を送る。


「ドアー閉まりまーあああす!!」


 成夢は理一の放送と同時に声を張り上げ、これ以上の乗車を遠慮願う。


 電車はぎこちなくドアを閉めようとするが、目の前のドアで今にも人とドアの狭間で押し潰されそうな鴨居に捕まる男性客のビジネスバッグが挟まったため、成夢は左足で二枚扉の右側を押し、左手で左の扉を手前にスライドさせた。この電車はドアの圧力がやや弱いステンレス車両のため、両手でも力を目一杯込めれば開けられるが、鋼鉄の車両は足を使わないと開けられない。


 男性客がバッグを引っ込めたところで成夢は手足を離し、バタン! と勢いよくドアが閉まった。


 電車が動きだしたら周囲の旅客の動きを注視し、時に黄色い線の内側へお下がりくださいなどの注意を加える。線の外側に人が居ると、転落の危険があるほか、駅係員や車掌の見通しが非常に悪くなるのだ。


 電車の去り際に車掌と敬礼を交わし、後ろ姿を見送ると、反対側に次の電車が入線。これを8時25分までの1時間繰り返してから事務室へ戻ると、豊茂と退社点呼を行って一日の業務は終了。同じく業務を終えたエレナと、他の社員に『お先に失礼します』と声を掛けながら事務室を出た。


 

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 業務終了!


 電車、列車、車両はそれぞれ意味が異なるため、作中にこれらの単語が混在しております。

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