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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
22/120

マニアトラブル

 4ドア車両がホームに差し掛かると、マニアたちはあちこちでカメラのシャッターを切る。早朝ということで周囲は明るく、フラッシュは焚かれなかったのでそれはヨシとした。


 列車は無事に停車し、前寄りの8号車付近に立つ成夢は段階クリアで一先ず安心した。


 ところが次の瞬間、最後部車両を撮影していたマニア十人のうち三人が成夢の立つほうへ向かってユサユサドタドタと全速力で駆け出した。理一が咄嗟に走らないでくださいとアナウンスを入れるが聞く耳持たず。そして、事件は起きた。


「ひゃあ!」


 バタリ、3号車から降りてきた老婆とマニアが衝突。老婆はその場に倒れ込むも、マニアは無視して先頭車両へ走り、撮影を始めた。


「大丈夫ですか!?」


 成夢は電車から離れたホームの内側を速足で歩き、立ち上がれない老婆に声をかけた。一方で理一は無線機で手の空いている他の社員を呼び出し、マニアを注意しに向かった。その間、電車は『お客さまトラブル』の名目で運転を見合わせる。


「あのですね、脚を挫いてしまって、立ち上がれなくなってしまって…」


 弱々しくもしっかり喋れているので、痛みの具合はさほど酷くなさそうだ。


「わかりました。助けを呼びますのでこのまま少々お待ちください」


 業務放送、2番線3号車付近ホーム上にてお客さま転倒。担架お願いしますと二度繰り返し、成夢は無線機で他の社員を呼び、ホーム上の事務室に居た助役の宮山みややま豊茂とよしげが立て掛けてある担架を担いで現場へ駆け付けた。


「おやまぁどうしたのぉ!?」


 中背で小太りの豊茂は制帽を被らずに来てしまったせいか、頭部が朝陽に照らされて反射光を放っている。


「電車降りたときに走って来たマニアの人とぶつかったんです」


「ありゃりゃりゃりゃー、そりゃ大変だぁ。とりあえず救護スペースに運ぼうか」


「はい!」


「ごめんなさいねぇ」


「いえいえ、とりあえず救護スペースに行きましょうね!」


 二人はせーのっ! で老婆の肩を持ち上げ担架に寝かせ、慎重に階段を下って改札口と事務室の境にある救護スペースに運ぶと、休憩室からエレナが出てきた。手が湿っぽい様子から、食器洗いをしていたのだろうと成夢は推測した。


 豊茂は成夢とエレナに老婆の手当てを任せ、理一をフォローするため慌ててホームへ戻った。


 その後、念のため老婆は豊茂が車椅子に乗せて病院へ移送し、加害者のマニアは身分を取り調べた上で厳重注意された。この影響により、うろな南線の初電は5分遅れの運行となった。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 全てのマニアの方が悪者という訳ではございません。

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