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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
20/120

丑三つ時のうろな駅

 丑三つ時とも呼ばれる午前2時。うろな駅の営業は終了し、通過するのはレールや『バラスト』という線路に敷き詰める砂利を積んだ貨物列車くらいだ。うろな本線ホームでは列車の長編成化に伴う延伸工事が夜通し行われているが、成夢たち駅社員は各々個室で仮眠をとっている。起床は4時。貴重な睡眠時間だ。


 プルルルルルル!


 誰も居ない駅長事務室の電話が3コール。これに気付いた社員が数名目覚めた。


 ピリリリリリ!


 続いて成夢のスマートフォンが鳴ったが、相手は公衆電話のため応答しなかった。


 ピリリリリリ! ピリリリリリ!


 あちこちで携帯端末の着信音が順次鳴り響き、社員たちは何事かとざわめき、休憩所に集まり始めた。やがてエレナのスマートフォンに着信し、社員の身に何かあったから誰かが片っ端から電話をかけているのかもしれないと懸念し通話することにした。


「もしもし」


 暗闇で一同が注目するなか、エレナは電話の相手に何を言われても驚かぬよう心構えた。


 そして、電話の向こうの誰かが、口を開く…。


 誰かが事故や事件に巻き込まれた? 急病で病院に運ばれた? まさか、まさかとは思うが、命の灯火が消えてしまった? 様々な憶測が逡巡する。


『わああああああっ!!』


「なっ、なにっ!? ど、どなたですか!? どうしたんですか!?」


 耳を壊すほどの悲鳴は、周囲の社員にも十二分に聞こえていた。


『わん! わんわん! この声はえれぴーだにゃん! ボクいっちゃん! メジャーリーガーになれないどころかさっきまでスナックで飲んでたらホームベースを締め出されて行き場を失ったわん!』


 偉大なる小出一郎助役は、電話の向こうで犬のようにハッハッハッハッと息を荒げている。


「皆さま、携帯電話の電源をお切りください」


 エレナは一同に告げ、自分も何かを訴える一郎に電源を切った。


 貴重な睡眠時間をこんな馬鹿げたことに使わされた社員たちは、今後一郎に対してどのような態度で臨むのだろうか。うろな駅の未来が、少し危ぶまれた。

 



 こんなお話にお付き合いいただきありがとうございます!


 今回のお話は実話に基づいたフィクションでございます。酔っぱらったからといって知人に片っ端から電話をかけるのはやめましょう。

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