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うろな駅係員の先の見えない日常  作者: おじぃ
駅係員たちの日常編
11/120

お忘れもの取扱所

 10時30分。成夢とエレナはうろな本線下りホームの監視台と接着している『お忘れもの取扱所』でパソコンを用い、うろな駅や周辺駅の拾得物を仕分けていた。うろな駅にはお忘れもの取扱所のない駅での拾得物も集約されるのだ。


「Melonは有価証券。あ、記名式じゃねぇなコレ。持ち主来るかなー。そういやMelonってなんでMelonなんですか?」


「メロンの網の目みたいに街のあちこちを網羅した、どこでも使えるカードを目指してるんだってー。今はうちの鉄道だけじゃなくてバスとかショッピングとか、マンションのカギにもなってたりするし」


「Melonパネェな。あれかな。切ったら果肉出てきたりすんのかな」


「開発段階では中に電解液を仕込んでたみたいだけど、すぐ乾いちゃったから不採用になったらしいよ」


「おぉ、スポーツドリンクだったのか~」


「いや、飲めないからね?」


「そういやなんで入院の見舞いにメロン持ってくんですかね。切りにくいのに」


「私の友だちがね、お見舞いに来た人が面会時間を少しでも長引かせられるように敢えて切りにくいメロンを持って行くんじゃない? って言ってた」


「へぇ、なんか心温まりますね!」


「あくまで友だちの持論だけどね。あ、このクマさん可愛い! 私欲しい!」


 エレナは段ボールに詰め込まれた拾得物の中から高さ30センチメートルほどのラブラドールレトリバーのような毛色のテディーベアを抱き上げた。


「持ち主見付からなかったら貰ってあげればいいじゃないですか。クマさんだって燃やされちゃうより嬉しいと思いますよ?」


「ふふっ、そうだね。よし、今日からキミはクゥちゃんだ♪」


「いや、まだ持ち主見付からないって決まったわけじゃ…」


 話し込んでいると、カラカラとアルミ製のスライド扉を開けて、一人の客が入ってきた。


「「いらっしゃいませ!」」


 二人は見事に声を合わせて明るく客を迎え入れたが、正直なところサングラスに黒いスーツ、青いワイシャツに金色のネクタイ、極めつけの武将髭ぶしょうひげという何か怪しい格好を見て職業を想像していた。年齢は40代といったところか。


「あの、ここに…。あ、いたいた!」


 男はエレナの手元に置いてあるテディーベアを見て言った。


「こちらのクマさん、ですか…?」


 エレナの表情が僅かに陰る。持ち主が見付かった無念と喜びが交錯して。


「クマさんじゃねぇよ! クマぴょんだよクマぴょん! ガキん頃からの唯一のパートナーなんだよ!!」


「左様でございますか…」


「あぁ、そうだよ。落としちゃってごめんにゃクマぴょん! 一緒に帰るぴょん! 駅員さんにお礼言おうにゃん? はい、ありがとクマー!」


 男はクマぴょんの頭をペコリさせ、ルンルンと取扱所を出た。


「うぅ、クゥちゃあん…」


「まぁ、なんというか、アレですね…」


「アレってなによ」


 エレナはムッと頬を膨らませて成夢に突っ掛かる。


「いや、なんというか…」


「ハッキリしなさいよ!」


 なんかめんどくせぇな…。


「今度、クマさんプレゼントしましょうか」


「ホント!?」


 エレナは目をキラキラさせ、両手で成夢の右手を握った。


「え? えぇ、まぁ…」


「ありがとー! 私も何かしてあげるー!」


「ありがとうございます…」


 成夢はドキリとしながら、この姉ちゃん憎めねぇなぁと思うのであった。





 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 リアルタイムに大変な遅れを出しているため、駅のワンサイクルが終了したら一気に巻き返しを図りますw

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