マニアは採らない?
「結論から言うと、どうにかなる! だから大丈夫!」
注文したサーモンサンドが運ばれてきて、それを一口食べてから久里浜さんが言った。僕も同じものを頼んで同時に頬張った。
ドリンクは久里浜さんがコーラ、僕はジンジャーエール。
「そ、そんな、なんの根拠があるっていうの!?」
他人事だと思って口から出まかせを。
「違うよ、目的地があるからなんとかなるんだよ。けど現状ではそこに辿り着けずに、それどころかすべてを失ってしまいそうだから私に相談してきたんでしょ?」
「そ、それは、そうです……」
「だったら私を信用しなさい。こんなんでも現役鉄道員。電車にはそんなに詳しくないけど鉄道会社のことは鯨よりは知ってる」
胸を張り、高らかに言った久里浜さん。
ううぅ、その言葉は胃をぎゅっと締め付けられる……。
「あの、唐突だけど、鉄道会社って、マニアは採用したくないんだっけ」
以前から気になっていて仕方なかったことを現役社員に訊ねてみた。
マニアは採らない。珍しい列車が来た場合、旧型車両引退、新型車両登場の際などに公私混同するから。マニア社員による業務支障やお客さまからのクレームもあるという。
「いや、マニアは欲しい、と思う。ある程度の知識があったほうが教育しやすいから。一方で私みたいに鉄道のことを全然知らないで入ってくる人もいる。鉄道信号機の存在すら知らなかった人もいる。
採用したくないとしたら、その、言いづらいんだけど、鉄道のことしか興味のない、いわゆるオタク、かな」
うううううう!! 胃が、胃が……。
「あぁごめんごめん、でも片瀬さんは鉄道オタクを理由に鯨を振ったりしないと思うよ!」
「そ、そうなの!?」
「うん。ていうか趣味を否定されるなら別れたほうがいい」
「そ、そうか。でも現状だと鉄道会社の内定は」
「難しい」
「ううう……」
「秋晴れの太陽の下で頭抱えてわかりやすく落ち込んでるね」
「だ、だって」
「言うまでもないけど会社に入るってことはそこの発展に寄与しなきゃいけないからね」
確かにそうだ。鉄道会社の仕事は多岐にわたり、駅や土地の開発や料理のプロデュース、アニメや映画の企画、植樹、発電所の管理、運用、金融、保険、物流、IT関連その他、また更なる新規事業、把握しきれない。
それは咲月さんにも言われていることだ。
「ただね、鉄道にしか興味のないオタクでも、活躍する術はある」
「え……!」
なになに、それなに!?




