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第7頁 書魔来襲

ようやく敵キャラの登場です!

長かった……。

「セラがそんなことをねえ……。あんた、セクハラでもしたんじゃないの?」


「そんなことしないさ!」


「ほんとに? あの子、幼児体形に見えるけど脱いだらすっごい身体してるからなー」


「してないったら!」


「ふーん……。ま、今回は特別にあんたを信用してあげるわ」


 翌日。僕は利用者が減り暇になった午後の受付で、ラスクと雑談に興じていた。今日の図書館の天気は霧。利用者が一番少なくなる気候だ。

 セラが走り去った後、しばらく茫然としていた僕は無事にラスクに発見された。彼女の方も、僕を捜してあたりをうろうろとしていたらしい。そうして発見された僕は若干遅刻しながらも訓練を受け、今に至っている。

 受けた訓練自体はさほど大したものではなかった。クリスタルのようなものに入り、中でひたすら瞑想をするだけである。魔法学園で魔力を練る訓練をしたことがあるが、それに似たような感じだ。なんでも訓練初期の段階では実戦形式のことは行わず、このようにしてクリスタルや機体操作の感覚に慣れることを重視しているらしい。

 ナイトスレイブは心と魔力で動かすんや――とは僕らの訓練を担当しているカルメ博士の言葉。実際にナイトスレイブには操縦桿などは一切なく、本当に考えるだけで動くらしい。ただし、機体に慣れていなければ歩くことすらままならないそうであるが。


「……でも困ったな、これから一緒に仕事することもあるだろうし」


「そうねえ、仲直りはしないとね。うーん……」


 テーブルにもたれかかり、フウと息を漏らすラスクと僕。その視線の先では、セラが本の山に囲まれて読書に勤しんでいた。彼女は僕たちからの視線に気付くと、肩をビクッと震わせて本に顔をうずめてしまう。明らかに昨日のことを気にしているようだった。


「いっそ、あんたから謝っちゃいなさいよ。そうすれば許してくれるでしょ」


「確かにそれで表面的には許してくれるだろうさ。だけど、それじゃ解決にはならない気がするんだ」


「どういうことよ?」


「セラがなんであんなに怒ったのか。その理由がわからないことには……ただ謝るだけじゃ駄目だよ。それにあの時のセラは凄く寂しそうだった。放ってはおけない」


「あんた、単純な顔に似合わず面倒なこと考えるのねえ……。私にはついていけないわ」


 ラスクはいかにもめんどくさそうといった風に両手を挙げた。彼女はそのままフラフラと奥の事務室の方へ行くと、そこにいた司書たちと雑談を始める。緩やかな風に乗って、最近話題のファッションやら街のグルメ情報などが次々と耳に飛び込んでくる。まったく、話が好きな人たちだ。女の子というのは大体ああなのだろうか。

 しかしどうしたものか。話し相手が居なくなった僕は、途端に考えがまとまらなくなってしまった。セラのさびしそうな背中。強い口調。それが際限なく繰り返される。

 仕方ない。僕は集中するための本を得るため近くの本棚へと足を伸ばした。するとここで、後ろから声がかかる。僕が振り返ってみると、そこには彩乃が立っていた。昨日は外出していたとかで姿を見かけなかったので、一日ぶりか。


「レイルじゃないか。どうだ、仕事はわかってきたか?」


「うーん、何とか……」


「おいおい、あまり元気がないな。何かあったのか?」


「大したことじゃないんですけど……」


 僕は彩乃に大まかな事情を話した。彩乃は納得したようにフムフムと頷くと、彼女自身も何か心当たりがあるような顔をする。


「セラの本捜しか。私も気になって何の本を捜しているのか聞いたことがあるが、今のお前と全く同じ状況になったな」


「へえ、彩乃さんも同じようなことがあったんだ」


「ああ。しばらくして私から謝って仲直りしたがな」


「……うーん。じゃあ結局、セナがどうしてあんなことをしてるのかはわからなかったんだ」


「まあな。あいつはそのことを話そうとすると異様に嫌がるから。流石の私でもそうズケズケとは聞けないさ」


「やっぱりそうなんだ……」


 僕は彩乃の方を見て大きく息をついた。彩乃は意外そうな顔をした僕に少々不満げだったが、すぐに機嫌を直すと僕の方にすり寄ってくる。


「お前、そんなにセラのことが気になるのか?」


「凄く寂しそうな顔してたんだよ。いつも無表情なんだけど、あのときだけは表情を変えてさ」


「ほほう、男として見過ごしてはおけないってことか」


「そ、そんなんじゃないけど……」


 僕の頬が少し熱くなった。彩乃はそれを見ると、フムフムと頷き、懐から手帳のようなものを取り出して開く。そしてそれをいかにもといった顔で僕に差し出してくる。みると、そのページにはカレンダーが書かれていた。


「……何これ?」


「見てわからんか? カレンダーだ」


「いや、わかるけどさ……。なんでカレンダー?」


「ふふふ、実はな……」


 彩乃は僕にそっと耳打ちをした。僕はその話の内容に、思わず耳を疑う。


「え、そりゃ無理じゃないか? 僕まだ新人で、自慢じゃないけど仕事もあんまり覚えてない!」


「大丈夫、その日は仕事なんてほとんどないから」


「にしたって、みんなが賛成してくれるわけないよ。他の日に休みたい人だっているだろうし」


「それについても大丈夫だ。なに、私に任せとけば万事心配ない――」







 それから五日が過ぎたある日。図書館の中は異常な静けさに包まれていた。館内に利用者の姿がほとんど見えない。それどころか、いつもはどんなに悪天候でも居るはずの司書たちの姿さえほとんど見えなかった。


「なるほど、こういうことだったのか」


 僕はテーブルに持たれながら『ランブリッジ市市制五十周年祭』と書かれたパンフレットに優曇華な視線を注いでいた。今日はちょうどこのパンフレットに書かれている祭が街で開かれているのである。昨日あたりから何やら街がざわついているので、ラスクに尋ねてみたら、このパンフレットが出てきたというわけだ。

 あの日、彩乃は僕にセラと二人っきりの日を造ってやると約束した。その約束の日が今日である。……あのときは彩乃の純粋な善意だと思っていたが、どうやら彼女としてはみんなと祭りに出かけるための口実がほしかったらしい。

 僕は横に座っているセラにチラっと眼をやった。あれから一週間が経過しているが、未だに彼女は僕のことを避けている。理由はどうあれ、せっかく二人きりになれたのだ。この機会になんとかしなければ。


「ねえ、セラ……。あの時のことなんだけど……」


「……ちょっと出かけてくる」


「えっ? ちょっと待ってよ!」


 僕の制止など聞こえないかのように、セラはそのままわき目も振らずに図書館の奥へと行ってしまった。僕はただ茫然と、それを見送ることしかできない。


「クソッ、二人きりになっても何も言えないのか……」


 僕は自分に悪態をつくと、テーブルに突っ伏した。下手に彼女を追いかければ、また道に迷ってしまうだろう。ゆえに追いかけられない。それがたまらなくもどかしい――。

 あまりにももどかしい気分だったので、普段はやらなくてもいいと言われた書類仕事にまで僕は手を出した。こういうときに限って仕事がはかどるはかどる。怒りのせいで変に集中できる状態のようだ。

 そうして一人きり――正確には地下にまだ人が残っているが――の図書館で書類の山と格闘することしばし。書類の山が半分ほどにまで減ったところで、何か嫌な気配がした。僕は書類を放り出すと、カウンターから身を乗り出す。

 奥だ。奥の方から何か強烈な魔力を感じる。信じられないほどの力だ。知覚などほとんどできないはずの魔力が、激流のように物理的な波動となって襲いかかってくる!

 身体が宙を舞う。図書館が激震した。あちこちの本棚が大きく傾き、魔天楼から崩れ落ちる瓦礫のように本が降ってくる。破滅的だった。僕の好きな図書館が、平穏なはずの姿を大きく変えていく。

 壁に叩きつけられ、全身を激痛が走る中、僕は這うようにしてカウンターの中へと身をひそめた。そして聞く、破滅の使者の雄たけびを――。


「グアアァ!!!!」


 魂が震える叫びだ。身体が打ち砕かれるような感覚が襲ってくる。おぞましい雄たけびはすでに物理的な音ではなく、絶対的な魔力の波長だ。これを耳にした途端、僕の頭に怪物の正体が浮かぶ。


「書魔――!」


次回からはいよいよ戦闘パート。

上手く描けるかどうかわかりませんが、ぜひご覧ください

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