ハングマンゲーム
「C・U・T・E M・I・R・I・A、良しこれで僕の勝ち」
「ええっ!? 可愛いミリアなんて言ってくれるなら勝ちを譲りなさいよ」
「そっちが無理やり言わせたんだろ、ハングマンゲームなんてもう止める」
「そう言わず、もう一回。もう一回やりましょう」
ハングマンゲームとは吊るされている人間を描き終わる前に英単語を当てるゲームだ。僕はちょっとこのゲームが苦手だった。吊るされている人間がまるで操られている僕のように思えたからだ。
「ミリアはいいね、どこも改造されてないんだから」
「あらっ、分からないわ。そのうちイミタシオンみたいに機械みたいにされちゃうかも」
僕の名前はイミタシオン、金髪に青い瞳をしていた。僕は体の一部を機械に改造されていた。しかも牢の中にいれられていた。僕を改造したのが実の父親だというのが笑える。僕が産まれた際に母が亡くなったことで父は僕を恨んでいた。
「ミリアは母さんと同じ黒髪に茶色い瞳だから改造されないのかも」
「私なんて買われた奴隷よ、牢に入れられているんだからいつか改造されるわ」
「おっ、そろそろいつもの時間だ」
「…………イミタシオン、勝ってね」
「もちろん」
「約束よ」
僕は改造人間だ。それで何をするのかというと闘技場で、同じように改造された人間と戦わされる。勝てば生き延びられるが負けたらそこでお終いだ。父は何の未練もなく僕を捨てるだろう。この時代では改造人間も奴隷の売買も非合法だった。そうして僕は同じくらいの少年と戦って勝った。その少年の遺体は闘技場の職員が片付けた。そうして帰ると父のラボに連れていかれた。そしてまた僕は体の一部を機械に改造された。
「うっ、ゲホッ!?」
「イミタシオン!! 大丈夫!?」
「ああ、ミリア。今日もなんとか生き延びたよ」
「そっか、それじゃハングマンゲームしよっ」
「またそれか」
「私が好きなんだもん」
僕は口では文句を言いながらミリアのことが好きだった。彼女は改造されていない可愛い女の子だったし、僕も思春期の男の子だったからだ。でも僕の体は大きくならなかった。改造人間同士の戦いは最初は人間型を保っている必要があるため、体が大きいほど改造もし放題で強かった。イミタシオンという僕は内蔵を除けばほとんど機械に改造されていた。でも境遇をなげいても仕方ないし、僕にはミリアがいてくれた。闘技場で勝ち続け、ミリアとハングマンゲームをするのが僕の日常だった。
「…………ミリア?」
ある日、突然ミリアがいなくなるまではそうだった。僕は生まれて初めて絶望した、成長して牢の中に入れられた時より、最初に改造された時より、父が僕を愛していないと知った時より絶望した。それでも僕はまたミリアと再会することを願って、闘技場で同じ改造された人間に勝ち続けた。そうしてその日、対戦相手を見て僕は驚いた。そこにはイミタシオン、つまりは僕がいた。
「Fight!!」
戦えと言われて僕はその僕自身と戦った、改造具合も同じくらいで苦戦に追い込まれた。父は何故か大喜びだった。僕が相手を破壊する度に喜び笑った。そうして僕が優勢で戦いが進み対戦相手と一瞬すれ違った時だった。
「ねぇ、ハングマンゲームしよう」
「――――――ミリア!!」
僕が僕自身と同じだと思って戦わされていたのは機械に改造されたミリアだった。本当に僕そっくりで気がつかなかった。僕は初めて手に仕込んだ武器を客席にいる父に向けた。僕の改造度はとっくに客席のシールドを破れるようになっていた。僕は壊れかけたミリアを連れて、客席を破って外の世界にある警察に駆け込んだ。そのまま僕たちは警察に保護された。
「貴方も彼女もひどく体を改造されています、人間の部分は極僅かです。意味は分かりますね」
「つまり残りの寿命も極僅かということですか」
「はい、特に彼女が酷い。女の子から男の子に改造されるなんて」
「ミリアは僕が引き取ります」
僕たちには体を治す金も頼れる親戚もなかった。だから僕はこの街で一番高いところにいって、姿は変わってしまったがミリアを抱きしめた。
「ねぇ、ハングマンゲームしよう」
「…………ああ、しよう」
街が一望できる高台で僕たちはハングマンゲームをした。いろんな言葉を作った。勝ったり負けたりしながら僕たちは大いに楽しんだ。それは僕の腕の中で彼女が冷たくなるまで続いた。ミリアが目を閉じて動かなくなってしまったら、僕は彼女を抱きしめて眠りについた。そう二度と覚めることのない眠りについた。
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