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同情の花
付き合っていたはずの恋人が別の相手と結婚するそうだ。
どうやら二股をかけられていて本命は向こうだったらしい。
私のことも堂々と彼女だと公言していたのに。
お陰で二股されたあげく捨てられたというレッテルを貼られた。
腹立たしい。
周囲の視線が不愉快だ。
同情なんてされたくない。
可哀想な枠の中に嵌められたくはないのだ。
一度その枠に嵌められてしまえば、ずっと可哀想な人というフィルターを通して見られることになる。
そんなこと御免だ。
あんな男、別れられてよかったのだ。
この先奥さんは苦労するだろう。
二股をかけるような男は同じようなことを繰り返す。
ずっと不倫に悩まされることだろう。
ご愁傷様。
ふと思い出して視線を巡らせた。
目的のものはすぐに見つかった。
壁に飾ってあるアルメリアのドライフラワー。
彼からもらった花束をドライフラワーにしたもの。
もういらないね。
壁から外してゴミ箱に捨てた。
涙が一雫だけ流れた。
きっと、残っていた情の、最後の一雫だろう。
読んでいただき、ありがとうございました。




