表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな花の物語  作者: 燈華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/63

敬慕の花

青空に伸びる枝の先に咲く黄色の花が目に眩しい。

まるで私が敬慕してやまない彼を見ているようだ。

いつでも彼は眩しくて、遥か遠くの高みにいるようで、真っ直ぐに見ることができないでいた。


「どうしました?」


穏やかな声に隣に視線を向け、すぐにまた花に視線を戻した。


「い、いえ、何の花かと……」

「ああ、なるほど。その樹は山茱萸(さんしゅゆ)と言います」


わざわざ手帳に字まで書いてくれる。


「江戸時代中期に朝鮮半島から伝えられました」

「そうなんですね。何かずっと日本にあるもののような気がしていました」

「ああ、わかります。何か日本的なんですよね」

「はい」

「ですが、知っていますか? 日本的と思われているものの多くは外国からもたらされていたりするんですよ」

「へぇ、そうなんですね」

「それでも古い時代に日本に入ってきたものは、長い時間を経て日本に根付いたもの。それは日本のものと言ってもいいかもしれませんね」

「そうかも、しれませんね」


彼の知識は深く、私は足下にも及ばない。

追いかけても追いかけても追いつけない、永遠の憧れの人。


「貴女はいつも私から視線を逸らしていますね」

「あ……」


気づかれていた。


「理由を伺っても、よろしいでしょうか?」


寂しそうに下げられた眉。

あ……。

それでも、真っ直ぐに見て告げることはできずに目を伏せた。


「あまりにも自分が無知で恥じて、ます」

「何も恥じることはありませんよ。私は好きで勉強しているだけですし年の功と言いますか。貴女は聞き上手でついお喋りになってしまいます」


それは過分な評価だ。

彼の言葉は私を惹きつけて耳を傾けてしまうだけだ。


「だからこそ、眩しくて」

「眩しい?」

「あの花のように遥か遠くにいるようで、振り仰げば遠くて、眩しくて、隣を歩くのも申し訳ない気がします」

「それは、寂しいことですね」

「え?」


思わず伏せていた視線を上げる。


「隣にいるのに遠く感じてしまいます」


それは、そうかもしれない。

彼は私の心の揺れを察したようだった。


「同じ目線に立てたら嬉しく思いますよ」

「はい……。努力、します」

「一緒に歩んでいきましょう」

「はい」


頷けば彼は微笑んだ。

それがどことなく嬉しそうなものに見えた。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ