59/66
優雅なふるまいの花
生の音楽を聴きながら食事を楽しめるレストラン。
ピアノの演奏に合わせて何曲か歌った後、交代して裏に引っ込んだ。
控え室として用意された部屋に入る。
テーブルの上にはブルーレースフラワーの花束がカードと共に置かれていた。
カードを手に取る。
「優雅なふるまいの君へ」で始まるカード。
送り主の名前はない。
でもわかる。
その筆跡を指でなぞる。
懐かしい筆跡。
幾度となく届いている花束とカード。
いつも彼は名前を書かない。
カードにはいつも応援の言葉が書かれている。
私は彼ではなく歌を選んだのに。
彼は変わることなく私を応援してくれる。
時々彼がこのレストランに食事に来ているのには気づいていた。
いつも一人だ。
そのことに密かに安堵してしまうことには気づかないふりをしている。
それは認めてはいけない。
私は彼ではなくて歌を選んだのだから。
だからーーこれだけで満足しないければ。
いつか、なんて甘い考えは捨ててしまわないと。
あの日、私の意志を尊重してくれた彼に恥じないためにも。
そう思うのに。
それでも、花とメッセージカードを嬉しいと思う気持ちだけは止められなかった。
読んでいただき、ありがとうございました。
明日は午前0時と午前7時の二回投稿します。




