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小さな花の物語  作者: 燈華


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謙遜と誠実の花

謙遜と誠実、それは確かに大切なものだ。

だけどそれは時と場合によるのではないか。

少なくともそれを強制してくる相手には必要ないものだ。

と心の中で呟いても、何の慰めにもならなかった。


「お前には謙遜が足りない。誠実さも履き違えている」などというよくわからない理由で彼氏に振られた。

一方的に別れを告げられた直後は頭が怒りでいっぱいだったが、家の近くまでくるとよくわからない虚しさと悲しみが心を満たしていた。


ふと紫色の花が見えて立ち止まる。

ああー…….。

ふらふらと門を開けて中に入る。

幼馴染みの家でよく遊びに来ていたので庭に入り込んだくらいで何も言われないだろう。


花壇の前にしゃがみ込む。

その囲った外側に楚々とした紫色の花が咲いていた。


「菫のようには生きられないよ」


可憐で控えめな雰囲気を持つ花。

彼が言っていたのはきっとこの花のような人のことだ。


「きっと、謙遜できて控えめに誠実に相手を立てるんだろうね」

「いや、菫って結構戦略的だし、気に入った所にしか根づかない我が儘な花だけど?」


知った声が聞こえてのろのろと振り向く。

そこには幼馴染みがいた。


「どうしたの? 話聞くよ?」


優しい声で言われて思わず頷いた。

隣にしゃがみ込んだ彼に胸の内を全てぶちまけた。

彼は顔をしかめた。


「そもそもさ、誠実はともかく相手に謙遜を求める男のどこがいいの? 器ちっちゃくない? 自分のことを棚に上げてるでしょ」

「言われてみれば」

「そんな男に君は勿体ない」

「確かに。あんな奴に私は勿体なかった」

「そうだよ。絶対にそう」


力強く同意されて吹っ切れた。

何をあんな男のためにうじうじしていたのだろう。


「ありがとう。次こそいい男を捕まえてやる」


いつもなら「ま、頑張れ」と軽い調子で言う彼が何も言わない。


「どうしたの? いつもみたいに頑張れって言ってくれないの?」


彼は真剣な顔で私を見る。


「僕にしておきなよ」

「え……?」

「君が捕まえてくる男って君の意志を蔑ろにする男ばかりじゃないか。全然諦められないよ。だから僕も立候補しようかなって」


驚きすぎて言葉が出ない。

ずっと幼馴染みの距離を崩すことはなかったのに。


「ま、考えておいて」


軽い調子で言った彼は立ち上がっていつもと変わらない様子で去っていく。


「ええー」と叫びそうになって慌てて口を塞ぐ。

だけど驚きすぎてぺたりとその場に尻餅をついた。

頭がパニックになり、そのまましばらく動けなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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