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小さな花の物語  作者: 燈華


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淑女のもの思いの花

私は一枚の絵画の前で足を止めた。


その絵画の題名は「淑女のもの思い」。

窓辺の椅子に座って頬に手を添え外を眺めているドレス姿の女性の絵。

もう片方の手にはミルトニアの花を握っている。


昔の絵は小物は全て記号的な意味を持っている。

つまり、このミルトニアの花にも記号的な意味があるはずだ。


単純に考えれば花言葉になぞらえ、彼女は貴族でもの思いに耽っているということを端的に表していると取れる。

題名もそこから取ったのだろう。


それだと簡単すぎる?

いえ、わかりやすく伝えるための記号なのだから単純でいいのだけど。


複雑に考えるなら……何かの謎かけとか?

実は隠された暗号があるとか?


さすがにそれは飛躍しすぎか。

でもそのほうが面白いかも、とちょっと思ってみたり。


まあそれはともかく、他に何か理由があるのだろうか?

ミルトニアでなければならない理由が。


だって"淑女"とか"物おもい"を表すなら別のもので表してもいいのだ。

もっとわかりやすいものはいくらでもあるだろう。


この花を見てミルトニアだとわかる人はどのくらいいるだろう?

その花言葉を知っている人は?


つい真剣に考え込む。


「どうしたの?」


一緒に来ていた彼が私の隣に並んで訊く。


「この花の描かれている意味って何なのかなって」

「彼女がこの花が好きだったんじゃない?」

「え?」

「彼女がこの花が好きだったから一緒に描いたんじゃないかな?」


目から鱗だった。


「あ、確かにそうかも」


なまじ知識があるから視野が狭く、頭がこちこちになっていたようだ。


「まあ、僕の意見も合っているとは限らないし」

「まあ、そうだけど。でも私にその発想はなかった。頭が硬くなっていたよ」


反省だ。

もう少し頭を柔らかくしないと。

きちんと作者の意図が取れない。

それは絵への冒涜ではないかとさえ思ってしまう。


「大事なことはそこじゃないと思うよ」

「え? じゃあ何?」

「絵を見て素直な感想を持つことじゃない?」


今度こそ本当に目から鱗が落ちた。

いつからか、絵を素直に観るよりもどういった意図で描かれたのかを考えるようになってしまっていた。


「本当だ。確かにその通りだね。ありがとう」

「どういたしまして」


改めて二人で絵を眺めた。

今までよりも素直に絵を観られる気がする。


読んでいただき、ありがとうございました。

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