平凡な花
私は自分が平凡な人間だと知っている。
「平凡でない奴に限って自分のことを平凡って言うんだよな」
彼がどこか呆れたように言う。
それにうんうんと頷く。
本当にそう思う。
自分のことは自分でよくわからないものなのかもしれない。
完全に呆れた目を向けられた。
「お前のことだよ」
「私は平凡な人間よ?」
「どこがだ」
その素早い突っ込みに私は目を丸くした。
「本当に平凡よ? そこにある木瓜くらいどこにでもいる人間よ」
「案外木瓜の樹ってその辺にないぞ」
「えっ、嘘?」
「いや、ホント。どこかずれてるんだよな」
ぼやくように言われるがそれどころではない。
「まさかそんな。木瓜なんてどこにでもあるでしょ。その辺にあるいっぱひとからげの花の樹のはず……」
「……何でそんなにショックを受けてるんだよ?」
「私のアイデンティティーが崩壊しそうなのよ」
「何だよ、アイデンティティーって?」
「木瓜のように平凡な人間っていうのが私のアイデンティティーなのよ」
「何だよ、それは。全然平凡じゃないだろうが」
「えー、平凡だよ。私も木瓜も」
「違う」
「えー、そんなぁ……」
彼はどこか遠くを見る。
「俺、何でお前が好きなんだろうな」
諦念を宿した声で言われる。
「え、私、おもしれー女枠?」
「違う」
そこはきっぱりと言われてほっとする。
「まあ結局、そんなお前のへんてこなところが好きなんだよな」
「へんてこって何よ?」
「へんてこはへんてこだ」
ぷぅっと膨れる。
それに彼は驚くほど優しく微笑って。
私の肩を抱き寄せ、こめかみにキスをした。
「愛してる」
「うん! 私も世界一大好きだよ!」
読んでいただき、ありがとうございました。




