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小さな花の物語  作者: 燈華


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ゆかしさと慈しみの花

「この蝋梅(ろうばい)のようにゆかしさを持ち、人を慈しみなさい」


祖父は私と蝋梅を見るたびにそのような言葉を繰り返していた。

祖父母の家には蝋梅の木があり、祖父はとても大切にしていた。


だから私もそうなりたいと思ったのだけれど。


奥ゆかしいという言葉は聞いたことがあるし何となくイメージがつく。

だけどゆかしい、って?

どう違うのだろう?

わからないので辞書を引いてみた。


「上品で、心がひきつけられるような人、ね」


ついでに奥ゆかしいも引いてみる。


「深い考えや心遣いを感じられて、心がひかれる、か」


どちらも心ひかれることが共通点だ。

敢えて言えば奥ゆかしいのほうが深い人間性を感じる。


「おじいちゃん、私にはそうはなれないよ」


できれば大好きな祖父の願いを叶えたかった。

だけど、私には人をひきつけるような魅力はない。


ごめん、と心の中で謝っておいた。




*




そんなことを思い出したのは彼と歩いている時に蝋梅が咲いているのに出くわしたからだった。

彼が花を見上げて訊く。


「この花、何て言うの?」

「蝋梅っていうんだよ」

「へぇ。何か蝋でできているみたいだね」

「だから蝋梅っていうんだよ。蝋梅の蝋は蝋燭とかの蝋の字」

「へぇ。面白いね。僕はけっこう好きかも」

「私も好きな花なんだ」


祖父と一緒に眺めているうちに私も好きになった。

祖父との想い出もあるからだと思う。


「そっか」


彼は私を見て微笑(わら)った。


「どことなく品があって引きつけられるね」


ああ、おじいちゃんと同じだ。

ますます彼が好きになる。


「まるで、君みたいな花だね」

「私?」

「そう。僕の心を引きつけて離さない」


ーーこの蝋梅のようにゆかしさを持ち、人を慈しむ人になりなさい。


祖父の言葉が甦ってくる。


どうやら私は祖父の願いを叶えられたようだ。

顔いっぱいで微笑(わら)う。


「ありがとう。私も大好きよ」


読んでいただき、ありがとうございました。

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