ひかえめな美の花2
目の前に置かれた鉢に植えられているのは春蘭という花らしい。
花言葉が「ひかえめな美」と聞いては? って思った。
まじまじと春蘭を見てしまう。
どこがひかえめなんだろう?
蘭の中では比較的地味、だとかそういうことなのだろうか?
確かに淡緑色の花は地味かもしれない。
だけど、地味とひかえめは違う。
確かに他の蘭から比べれば主張的でない分、ひかえめかもしれない。
だけど、この花をひかえめだとは断じて認めない。
わかっている。
そんなのただの言いがかりだと。
彼が彼女のことをこの花のようにひかえめで美しい、と言ったから。
わかっている。ただの僻みだ。
彼女だって彼の友人でしかない。
それは勿論わかっている。
この花をくれたからそんなことを言ったに過ぎないのだろう。
でも、何気なく言われた言葉って残るでしょ。
言ってすぐに本人は忘れたとしても。
「どうしたの? 好きじゃない?」
なーんにも気づかないで呑気に言ってくるのも腹が立つ。
「別に」
つんと素っ気なく言う。
首を傾げながら彼は的外れなことを言う。
「君はもっとゴージャスな花のほうがぴったりだよ? でもこの花も可愛いでしょ? 部屋のいいアクセントになるんじゃないかな?」
そういうことじゃない。
そういうことじゃないのに。
「うーん? 本当にどうしたの? ご機嫌斜め?」
鈍感過ぎる。
愛しい分だけ憎らしくなってきてしまう。
「そうね」
「そっか。どうしたら機嫌を直してくれるかな? 僕の愛しいお姫様は」
そんな風に言っておけば機嫌を直すと思われているなんて心外だ。
もういっそ私も誰かを褒めちぎろうかしら?
そうすれば私の気持ちも少しはわかるでしょ。
……何のダメージも受けてくれなければ、惨めになるのは私のほうだけど。
心の中で溜め息をつく。
ここは私が大人になるしかない。
「そうね。私に似合う花を両手いっぱいにちょうだい。そうしたら許してあげる」
彼はほっとしたようだった。
本当に気づいていないのだ。
本当に鈍感な人。
「うん、わかった。楽しみにしていて」
「ええ」
……きっとその花で私は彼を許してしまう。
本当、恋というのは惚れたほうの負けなのだ。
読んでいただき、ありがとうございました。




