表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな花の物語  作者: 燈華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/63

悲哀の花

窓辺には紫色のヒヤシンスが咲いている。

それなのに貴方はいない。


その紫色がまるで悲哀の色のようで。

咲くのを楽しみにしていたのに、今はその花を見るだけで物悲しくなってしまう。


スマホで写真を撮って貴方に送ってみても返事はない。


貴方がくれた球根なのに。

花が咲いたら一緒に見ようって言っていたのに。

花が咲くまでには帰ってくるよ、と、そう言っていた、のに……。


「嘘つき」


ぽつりと呟く。

その声が空気に溶けーー


ばん!


驚いて振り向く。


「ただいま! 遅くなってごめん!」


彼が、入ってきた。

びっくりして目を丸くしてしまったけど、すぐに微笑んだ。


「遅いわ。もう咲いちゃったわよ。」

「えっ!? 本当に!?」


大袈裟なまでに驚き、慌てている。

何も変わってない。

それにほっとする。


「ええ、本当よ」

「そっかぁ……」


彼はがくっと肩を落とした。


「連絡はしたわよ。でも、全然返事を返してくれないのだもの」

「ごめん。実はスマホ壊した」

「あら道理で。連絡がつかないから心配してたのよ」

「本当にごめん。スマホ壊れて連絡できなかった」

「無事でよかったわ」


本当に。

何かあったのかとずっと心配で、不安だった。

無事な姿を見て本当に安心したのだ。


「そうだよね、心配するよね。今度からはどうにかして連絡するから」


本当は次、なんてないほうがいいけど。

何があるかわからない世の中だ。


「ええ、そうしてちょうだい」

「うん」


ようやくほわりと微笑(わら)った彼が言う。


「約束通り、一緒に見ようか?」

「ええ」


二人で向かいかけてはっとした。

言い忘れていた。

私は心からの微笑()みを浮かべて告げた。


「その前に、お帰りなさい」





読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ