悲哀の花
窓辺には紫色のヒヤシンスが咲いている。
それなのに貴方はいない。
その紫色がまるで悲哀の色のようで。
咲くのを楽しみにしていたのに、今はその花を見るだけで物悲しくなってしまう。
スマホで写真を撮って貴方に送ってみても返事はない。
貴方がくれた球根なのに。
花が咲いたら一緒に見ようって言っていたのに。
花が咲くまでには帰ってくるよ、と、そう言っていた、のに……。
「嘘つき」
ぽつりと呟く。
その声が空気に溶けーー
ばん!
驚いて振り向く。
「ただいま! 遅くなってごめん!」
彼が、入ってきた。
びっくりして目を丸くしてしまったけど、すぐに微笑んだ。
「遅いわ。もう咲いちゃったわよ。」
「えっ!? 本当に!?」
大袈裟なまでに驚き、慌てている。
何も変わってない。
それにほっとする。
「ええ、本当よ」
「そっかぁ……」
彼はがくっと肩を落とした。
「連絡はしたわよ。でも、全然返事を返してくれないのだもの」
「ごめん。実はスマホ壊した」
「あら道理で。連絡がつかないから心配してたのよ」
「本当にごめん。スマホ壊れて連絡できなかった」
「無事でよかったわ」
本当に。
何かあったのかとずっと心配で、不安だった。
無事な姿を見て本当に安心したのだ。
「そうだよね、心配するよね。今度からはどうにかして連絡するから」
本当は次、なんてないほうがいいけど。
何があるかわからない世の中だ。
「ええ、そうしてちょうだい」
「うん」
ようやくほわりと微笑った彼が言う。
「約束通り、一緒に見ようか?」
「ええ」
二人で向かいかけてはっとした。
言い忘れていた。
私は心からの微笑みを浮かべて告げた。
「その前に、お帰りなさい」
読んでいただき、ありがとうございました。




