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小さな花の物語  作者: 燈華


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慰安の花

いつも家のことをしてくれるからと夫が慰安旅行をプレゼントしてくれた。

それならば一緒に来てくれてもいいのに。

一人で旅行に来てもつまらない。


てっきり一緒に来るものだと思っていたから友人も誘わなかった。

こんなことなら誰かに声をかけてみればよかった。


お喋りする相手がいないのは寂しい。

美味しいものを食べても、綺麗な景色を見ても共感してくれる相手がいない。


アイスランドポピーの花畑。

五百円で十本まで摘めると聞いて鋏を借りてきた。

料金は鋏を返す時に払うシステムだ。


旅行中に花を摘むなんてと思わないでもないけど、どうせ明日帰るのだ。

今日は適当なものに水を入れてそこに挿して凌げばいい。


それにしても綺麗だ。

色々な色があり、どれも素敵で目移りしてしまい、なかなか決められない。


こんな時連れがいたらお喋りしながら決めていけるのに。

本当に一人はつまらない。


ふと名前を呼ばれたような気がして振り向く。

夫がいた。腕一杯にアイスランドポピーを抱えて。


「あら、あなた。どうしたの?」

「急いで仕事を終わらせて追いかけてきた」

「そう。その花は?」

「ここは花が摘めるだろう? 君が好きそうな花を選んでたらこんなにいっぱいになってしまった」


彼の腕の中の花はカラフルだ。

でも一つとして好みではない花はなかった。


「はい」と差し出されて受け取る。


「どうせなら一緒に選びたかったわ」

「あ、わ、そうか。ごめん」


わたわたする姿に微笑()みがこぼれてしまう。


「でも、嬉しいわ。ありがとう」


夫はほっとしたように微笑(わら)った。

その腕に腕を巻きつける。

一体いつぶりだろう?


「せっかくだもの。一緒に見ましょう?」

「うん、そうだね」


わたわたと再び慌てていた彼がはにかんだように微笑(わら)う。


ゆっくりと歩き出す。


ーー本当は貴方と一緒に見たかったのよ。


一人で来させられた仕返しに教えてなんてあげないけど。


読んでいただき、ありがとうございました。

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