恥ずかしがりやの花
恥ずかしがりやの私はいつも貴方の後ろに隠れていた。
貴方は嫌な顔一つせずに私を後ろに隠してくれた。
その優しさに甘えた。
恥ずかしさが去るまで貴方の背中に顔を埋めていた。
だけどいつまでも彼の後ろに隠れているわけにはいかない。
そう奮起したのはもう十何年も前のこと。
関係が変わり、隣にいられるようになった。
それでも彼の優しさは変わらない。
私を背中に隠してくれたあの時のままだ。
私の部屋で一緒に呑んでいる時にふと訊いてみた。
あの頃の私のことをどう思っていたのか、と。
「ん? 可愛いなぁって」
「面倒だって思わなかった?」
「全く思わなかったよ」
「どうして?」
自分でも面倒だって思うのに。
「だって恥ずかしがっていただけだろう? それに頼られているようで嬉しかった。君はあまり人に頼ろうとしないから」
「え? 私、結構頼りっぱなしだったと思うけど」
「うん? 君は頑張り屋で自分の力でどうにかしようとしていたよ。どうにかできなかったのは恥ずかしがりやということだけじゃないかな?」
「う、うーん? そんなことはないと思うけど」
「自分のことはわからないか」
「うん。でも、もう背中に隠れなくても大丈夫よ」
「もう随分と前にやめたじゃないか」
「いつまでも貴方の背中に隠れちゃ駄目だって思ったもの。私、変わったのよ」
むん、と拳を握ってみせると彼は微笑った。
その微笑みが思いのほか優しくて、どぎまぎして視線をそらす。
視線の先にはピンクのシクラメンのポストカード。
私が気に入って飾っているものだ。
落ち着くまでとぼんやりとそれを見ていると彼がぽつりと言った。
「君は変わってないと思うよ」
「ええー、頑張ったのに」
微笑った彼が顔を近づけてきた。
ーーだって今も変わらず恥ずかしがりやだろう?
耳元で囁かれて真っ赤になった私は彼の言う通りなのだ。
読んでいただき、ありがとうございました。




