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気品の花2
高さ十センチほどの小さな白い花の鉢植え。
彼が気紛れに贈ってくれたもの。
「何か気品があって君みたいだったから」
その言葉でさえ気紛れで、きっともう覚えていない。
セツブンソウ。
名前からは決して気品など感じられない。
筋の多い花びらはくしゃっと紙を握って開いたかのよう。
どこに気品があるのだろう?
じっと見続けて、不意に気づく。
そうか。
気品を感じられるかは自分の心の有り様なのだ。
この花に気品を感じて花言葉に「気品」とつけた昔の人のように。
それにはそれを感じられるだけの繊細さが必要だ。
ということは彼にもそんな繊細さがあるということだろうか?
そう考えてすぐに否定する。
いやそんなものはない。
あの気紛れな猫のような男にあるはずがない。
だけど。
ちらりとセツブンソウの花を見る。
彼が気品のあるところが私に似ていると言った花。
たとえ、もうその言葉を忘れているとしても。
この花を贈ってくれた時には彼も私の何かを見て気品を感じてくれたのだ。
ならいいか。
このしわくちゃの花びらを持つ花のように自分でも持てあます私の中に気品を感じてくれたのなら。
私は私のまま生きていこう。
読んでいただき、ありがとうございました。




