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小さな花の物語  作者: 燈華


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的確な花

彼は的確に私の心情を見抜く。

表情と心が一致していなくてもわかってくれる。

わかって、しまう。


私がつらくても微笑(わら)っている時でも。

傷ついても何でもない顔をしている時でも。

興味が全くないのに興味のあるふりをしている時でさえ。


その場で指摘して私の立場を悪くするようなことはしないけど。

後で必ず声をかけてくれた。

私がそれ以上、無理をしないように。


そんな彼のお陰で私は何とかやってこられた気がする。

彼の存在が私にとってはかなり大きい。


だから、告げた。


「私のこと何でもわかってるよね。まるで精神的な双子みたいじゃない?」


彼の眉間に深い皺が寄る。

よほど嫌なようだ。


「俺がお前のことをわかるのは、ずっと見てるからだ」


わかっているだろう、という目で見られる。

勿論わかっている。


彼が私のことをよくわかっているのは、私が彼に愛されているからだ。

それは勿論よくわかっているけど。


「ほら、精神的な双子ならずっと一緒にいられるかなって」

「ずっと一緒にいたいのか?」

「うん。離れるの、やだ。貴方が離れていくのは耐えられないよ」

「俺はずっと傍にいる。離れるつもりはないぞ? と言っても不安か?」

「……うん」


その不安ですらも彼には見抜かれてしまう。


「どれほど約束してもきっと不安なんだろうな」

「うん、ごめん……」


きっとどんなに言葉を尽くして約束してくれたとしても、やっぱり不安はなくならないだろう。


ぽんぽんと彼が私の頭を撫でる。

まるで気にするな、と言ってくれているかのよう。


それから胸元に生花で作ったコサージュをつけてくれた。

ふわりといい香りが漂う。


「いい香りだね」

「ボローニアという花だ。今日はこれを渡すつもりだったんだ。ちょうどいい。不安になったらこの香りを思い出してくれ。俺が言ったことを思い出してほしい」

「うん」

「それで俺に何度でも確認して」

「嫌にならない?」

「ならない」


きっぱりと言ってくれる。


「むしろ遠慮して言わないでお前が不安の中にいるほうが嫌だな」


ふわりと花の香りが鼻をくすぐる。

その優しさも含めてこの花の香りを覚えておこう。


「わかった。じゃあ不安になったら何度でも確認する」

「そうしてくれ」


ようやく彼は表情を緩めて微笑んでくれた。



読んでいただき、ありがとうございました。

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