嫉妬の花
私は彼女に嫉妬している。
彼の幼馴染みに。
幼馴染みというだけで、たやすく彼と笑い合い、遠慮なく触れられる。
彼女でも何でもないただのクラスメートでしかない私には嫉妬する権利すらないけれど。
遠目で眺めるだけでせいぜいだ。
ずるいずるいずるい。
幼馴染みというだけでそんなに近くにいられるなんて。
私なんて用事があって話しかけるのにだって緊張してうまく話せないのに。
放課後の教室でふぅっと息をつく。
教室内には誰もいない。
いつも一緒に帰る友人は今日は用事があるからと急いで帰っていった。
他の友人たちは部活に励んでいることだろう。
私は一人、忘れ物をして取りに戻っていた。
机から黄色の薔薇のイラストの筆箱を取り鞄に入れた。
何となくすぐに帰る気になれず自席に座ってぼんやりする。
こんな時でも彼の席に座ってみる、とかそんな勇気はない。
誰かに見られたら……と思うとできなかった。
「あれ? 帰らないの?」
不意にかけられたその声に驚いて振り向く。
教室の入り口にまさかの彼がいた。
「う、うん。忘れ物取りに来て、ちょっと休憩してたところなんだ」
「そうなんだ。実は俺もなんだ」
「そうなんだ」
うまく取り繕えているだろうか?
彼は自分の席から教科書を出して鞄に押し込んだ。
それから私を振り向く。
「まだいる? それともそろそろ帰る?」
「あ……」
もっと話したい。
だけど、そう言っていいかわからない。
「帰るなら、一緒に帰らない?」
「え……?」
「あ、急に言われても困るよな。ごめん。忘れて」
「ううん、違うの。もっと話したいって思ってたところだったから。えっと、お願いします?」
彼は吹き出すように笑った。
「俺から誘ったんだよ?」
「あっ、そうだった」
「そうだよ。帰ろっか」
「うん」
立ち上がって彼とともに教室を出た。
夕日が廊下を照らしている。
だから彼の耳が赤い気がするのはきっと、夕日のせいだ。
読んでいただき、ありがとうございました。




