あなたは完ぺきの花
グズマニアの手入れをしている彼の背中を見つめる。
そのグズマニアは私が彼の誕生日に贈ったものだった。
存外丁寧に彼はグズマニアの世話をしている。
意外と気に入っているようだ。
彼は別に植物に興味などない。
殺風景なこの部屋にせめてもの彩りを、と思ってちょうど彼の誕生日だったから贈っただけだ。
そこに他意はない。
こんなふうに休日に彼の家に遊びにくる仲だけど、私たちの関係はあくまでも友人の域を出ない。
絶賛片想い中なのは私のほうだけだ。
彼が振り向いた。
グズマニアの様子が見えるようになる。
植物なんて本当に興味などないのに、グズマニアは枯れることなくむしろ活き活きとしている。
本当に何でもそつなくこなす男だ。
「あなたって完ぺきよね」
そう言えば彼の眉根がぎゅっと寄る。
「完ぺきって何だ? 俺だって普通の人間だぞ? 失敗だってするし、意外と腹黒いことを考えていたりする」
「腹黒いこと?」
「そう。お前を手に入れるためにどんな手を使えばいいか考えている」
ん?
何か今変なことを聞いた気がする。
私の様子なんてお構いなしに続ける。
「もういい加減関係を進めたい」
「へ?」
たぶん私は相当間抜けな顔をしていたと思う。
彼は笑みを浮かべて近づいてくる。
その笑みにはどことなく凄みがある。
端的に言えば怖い。
「男の部屋に一人で来るなど同じ気持ちだと期待するのは当たり前だ。それとも異性として認識していないのか?」
椅子の背もたれに両手をついた彼がぐっと顔を寄せてくる。
びっくりして動けない。
「な、だって、ずっと友達だと思っていたんじゃないの?」
「そんなこと、一言も言った覚えはない」
「だって、好きだなんて言われたことないし、」
「好きだ」
「ずっと、私だけ好きなのかと……」
間近で嬉しそうに微笑う。
反則だ。
でも、言葉の間に挟んできた言葉をもう一度きちんと聞きたい。
「……もう一度言って」
「望むなら何度でも。ずっと好きだった」
「……私も」
彼の微笑が深くなる。
彼の手が頬に触れ、そのまま滑って後頭部に回された。
「嫌なら逃げろ」
私は返事の代わりに目を閉じた。
読んでいただき、ありがとうございました。




