もの思いの花
黙っていると何かを考えていると思われる。
たとえ何も考えずにぼーっとしている時でさえも。
思案顔とでも呼べばいいのだろうか?
鏡を見ても自分ではそうは思えない。
人は何を見てそう判断するのだろう?
たまたま行き合い、お互いの近況報告をと入ったカフェで幼馴染みに訊いてみた。
「私ってそんなにもの思いに耽っている顔してる?」
「ん? どうした?」
「そういうふうに言われることが増えたのよ」
よく意味がわからなかったのか彼は怪訝そうな顔をしている。
もう少し具体的に言わないとわからないか。
実際それで困っているのだ。
「真剣な顔で聞いていても、もの思いに耽ってないでちゃんと聞いてって怒られるの」
「それは理不尽だな」
「そうなの」
わかってくれたのが嬉しくて力強く頷く。
彼は腕を組んで難しい顔だ。
「俺はそうは思わないけどな。まあそれは俺が付き合いが長いからだろうしな」
それもきっとある。
ふと彼が視線を窓の外に向ける。
「あの花だって物思いに耽っているって思われていたりするんだぞ」
彼が指差すのは花壇に植えられたパンジーだ。
確かに人の顔に見えなくもない。
「へぇ」
だけど何が言いたいのだろう?
「つまりはだな、人は勝手に見たいように見るってことだ。文句を言われたらちゃんと聞いてるって言えばいい。黙っていたってお前の評価が下がるだけだ」
「う、うん」
「なんなら話の内容を伝えればいい。そうしたらきちんと話を聞いているって伝わるはずだ」
こくりと頷く。
「でも、それでも信じてもらえなかったら?」
彼は腕を組みかえた。
「そうだな、その時は友達をやめる」
「え?」
「それが嫌なら何回でも伝えるしかない」
「そう、だね」
確かに彼の言う通りだ。
友人でいたいのなら何回でも伝えるしかない。
それでも信じてくれないならーー果たして友人と呼べるだろうか?
「ただお前が傷ついてまで関係を続ける必要はないと思うぞ」
「……うん」
「ま、それは俺の個人的な見解だ。そんなに思い詰めるな。愚痴くらいならいつでも聞いてやるから。それに、俺はお前の味方だ」
「うん。ありがとう」
一人でも信じてくれるなら心強い。
一人じゃない。
それだけで勇気が湧いてくるようだ。
今度言われたらはっきりとちゃんと聞いていると主張しよう。
それで駄目ならーーまた彼に愚痴を聞いてもらうことにしよう。
読んでいただき、ありがとうございました。




